カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.62

2026年9月3日

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机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata 
2026年9月 953号初出

約5000年の歴史を持つ、天然のタンパク質繊維。

ゴキブリ研究家としても知られる柳澤静磨氏の繭コレクションの一部。右下の大きな繭は2匹のカイコが作ったもの。柳澤氏らによる図鑑『カイコ』が技術評論社より7月に発売された。

 繭は、カイコ(蚕)の幼虫が蛹になる際に、体の周りに吐き出した糸を層状に重ねてつくる構造物だ。その糸の正体はフィブロインと呼ばれるタンパク質で、外側をセリシンと呼ばれる別のタンパク質が覆い、糸同士を接着している。フィブロインはしなやかで光沢があり、絹織物特有のなめらかな肌触りはこの成分によるものだ。カイコの品種改良の歴史は古く、中国では約5000年前から始まったとされる。野生のクワコ(桑蚕)を祖先とするカイコは、長い年月をかけて人間の手によって選抜・交配が繰り返され、今では自力では飛ぶことも野外で生きることもできない、完全な家畜昆虫となった。現在、日本だけでも1900系統のカイコがおり、農業・食品産業技術総合研究機構では600系統以上を保存している。品種によって繭の形や色は驚くほど多様だ。白い球形の繭だけでなく、黄色やオレンジ、ピンクがかったものまで存在する。黄色い繭はフラボノイド系の色素を餌のクワの葉から取り込んだもので、日本の在来品種に多い。形も楕円形や瓢箪形など品種によって異なる。1つの繭から取れる糸の長さは品種にもよるが、長いもので約1500mにも達する。