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アメリカじゃあ、MLP(メジャー・リーグ・ピックルボール)が盛り上がってるってよ!

東レ

2026年9月16日

photo & text: Yusei Kanda

アメリカでは、街とスポーツの距離が近い。地元の野球チームを応援するように、いまではピックルボールにも都市を背負うプロチームがある。それがMajor League Pickleball(通称MLP)だ。男子と女子が同じチームで戦い、ドラフトや移籍があり、シーズンを通して王者を決める。1965年に家の裏庭から始まった遊びは、いまや歓声に包まれるプロリーグへと成長した。

MLPは、アメリカの都市別チームがシーズンを戦うプロピックルボールリーグ。2021年に8チームから始まり、現在は全米各地を拠点にする20チームが参加している。
男女のトップ選手が同じチームで戦い、ドラフト、レギュラーシーズン、プレーオフを経て年間王者を決める。つまり、テニスのようなラケットスポーツに、NBAやMLBのチーム文化を持ち込んだようなものだ。

今回、その熱気を確かめるために訪れたのが、ロサンゼルス市内から車を1時間ほど南に走らせたところにあるニューポートビーチ。真っ青な空の下、コートをぐるりと囲むスタンドは観客で埋まり、試合開始前からすでにお祭りのような雰囲気だった。

いよいよ会場へ。今日は朝からかなり暑い。

応援用のスティックを手に、準備は万全。会場の空気感は、スポーツ×フェスのような盛り上がり。この日の最高気温以上に、会場の熱気がすごかった。

MLPのチームは基本的に男子と女子で構成され、女子ダブルス、男子ダブルス、そして2つのミックスダブルスで勝負する。4試合を終えて勝利の数が同じなら、最後は「DreamBreaker」へ。各チームの選手が4ポイントずつシングルスを戦い、次々と交代していく特別ルールだ。

面白いのは、誰か1人だけ強くても勝てないところ。ダブルスの相性、コート上の会話、ベンチからの声、そしてプレッシャーのかかる場面での落ち着き。全部を含めて1つのチームになる。

試合を観ていると、ネット際で優しくボールを送り合っていたと思った次の瞬間、突然ものすごい速さの打ち合いが始まる。静と動の切り替えがあまりにも速く、こちらもつい前のめりに。ピックルボールって、こんなにスリリングだったんだ。

【MLPの1試合はこう進む】

GAME 1:女子ダブルス 繊細なコントロールと長いラリーに注目。

GAME 2:男子ダブルス パワフルなドライブと高速ボレーが飛び交う。

GAME 3・4:ミックスダブルス ペアの役割分担とコンビネーションが勝負。

2対2なら:DreamBreaker 4人全員が交代でシングルス。21点、2点差で決着。

テニスコートより小さい。でも、盛り上がりはメジャー級。

そもそもピックルボールとは、パドルと呼ばれるラケットで、穴のあいたプラスチックボールを打ち合うスポーツ。コートはテニスコートより小さく、ネットの両側には“キッチン”と呼ばれるノンボレーゾーンが設けられている。

誕生したのは1965年、ワシントン州のベインブリッジ島。家族で遊ぶために、卓球のパドルやバドミントンコートなど、手元にあった道具を組み合わせて始めたのが原型とされている。

ルールはシンプルで、初心者でも短時間でラリーを楽しみやすい。だが、簡単に始められることと、簡単に勝てることは別の話。ネット際の柔らかなショット、相手の足元を狙うコントロール、瞬時に始まる高速ボレーの応酬と、知れば知るほど奥が深い。

プレーヤー同士の距離が近いことも特徴だ。試合の合間に会話が生まれ、1人でコートへ行っても、その場にいる人とペアを組める。競技であると同時に、人と人をつなぐ社交の場でもある。その親しみやすさが、公園の遊びからプロリーグまで一気に広がった理由の一つなのかもしれない。

これがピックルボールで使う“パドル”。ラケットとは呼びません。

パドルを分解してみると、1枚の板ではないことがよくわかる。表面材の下にはハニカム状のコアがあり、周囲をエッジガード、手元をグリップが支えている。表面の素材、コアの厚さ、パドルの形状や重量バランスによって、ボールの飛び方、スピン、コントロール性能、手に伝わる感触が変わる。

選手が求めるのは、単純な“飛び”だけではない。ネット際ではボールを柔らかく落とし、チャンスが来れば一気に加速させる必要がある。その正反対の感覚を1本のパドルで両立させなければならないのだ。

そんなニーズに応えるため、競技用パドルで採用が広がっている素材が、カーボンファイバーだ。よーく表面を見るとわかる、独特な黒い質感の正体がそれ。軽さと強さを兼ね備え、高い剛性と繊細な打球感を両立できることから、トップ選手たちにも支持されている。

日本の先端素材メーカー〈東レ〉は、このカーボンファイバーでトップシェアを誇る。一部のパドルブランドに採用されるなど、ピックルボールとの繋がりが深い。2025年にはMLPとのパートナーシップを結んだ、カーボンファイバーをはじめとする素材技術を通して、競技の発展を支えている。

カーボンファイバー(中)は、鉄の4分の1の軽さでありながら、重さ当たりの強さは鉄の10倍を誇る素材。鉄で出来たパネル(左)で重さや硬さを比較して、その違いを実感。

〈東レ〉の名前を聞いたことがない人も、実は身近なところでその素材は使われる。〈ユニクロ〉の「ヒートテック」、「エア ジョーダン」シリーズのミッドソールのプレート、ボーイング社の航空機の機体まで、さまざまなところでその技術が使われている。

パドルの性能はカーボンファイバーだけで決まるものではなく、コア構造や形状、重量バランスなど、さまざまな要素が組み合わさって生まれる。その上で、選手やメーカーが求める性能を安定して実現するために素材は重要な役割を果たしている。〈東レ〉が得意としているのは、そんな品質のばらつきを抑え、狙った性能を再現しやすい素材を供給できることだ。

プロにとっては、「昨日使った1本と、今日使う1本の感覚が違う」というのは小さくない問題。いつ手に取っても同じようにボールが飛び、同じように回転をかけられる。その当たり前を、素材の精度が支えている。

完成したパドルではわかりにくい部分だけれど、選手が迷わず1球を打てる裏側には、こうした素材の安定性があるのだ。

会場内には〈東レ〉のブースも登場。

人気バスケットボールシューズ、「エア ジョーダン 11」にも〈東レ〉のカーボンファイバーが。

ピックルボールは、身近な道具を組み合わせた家族の遊びとして始まった。それがいまでは、都市別のプロチーム、満員のスタンド、トップアスリート、最先端の素材技術が集まるスポーツへと成長している。

MLPのコートでは、世界トップクラスの選手たちが1球ごとに駆け引きをし、ベンチでは仲間が声を張り上げ、観客は地元チームのために立ち上がる。簡単に始められるスポーツが、極めるとここまで速く、緻密で、感情的になる。

そしてMLPの魅力は、競技がまだ変化の途中にあることだ。ルールも、観戦スタイルも、チーム文化も、道具も、これからさらに進化していく余地がある。

裏庭から始まったゲームが、どこまで大きくなっていくのか。MLPを観ていると、その未来は思っているより近くにあるように感じた。

インフォメーション

アメリカじゃあ、MLP(メジャー・リーグ・ピックルボール)が盛り上がってるってよ!

東レ

ニューポートビーチ大会のタイトルスポンサー。コート上にも大きく”TORAY”のロゴが見える。

Official Website
https://www.toray.co.jp