TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】ふわっとした時間

執筆:石川紅奈

2026年10月4日

予定が突然キャンセルになってしまったときに、スケジュールには無かったふわっとした時間が生まれることがある。

そういうとき私は、行動していたことでせき止められていた心配ごとや想像が、じわじわと頭の中を占領していって、気づけば次の予定まであと数分しかない…みたいな状況によく陥っていた。時間があるはずなのに焦っていた経験が数えきれない。

一緒に過ごすと、時間がゆっくり流れているように感じる人がいる。忙しくしていても、焦っていないし、視野が広い。でも、無理に視野を広げようとしているようには思えなくて、ただ、たくさんのことをキャッチできる、感度の良い柔らかいアンテナをもっているようなイメージ。それでキャッチしたことをシェアしてくれる言葉はいつも鮮度が良くて光がある感じがする。

思えばコロナ禍、散歩をたくさんしていた。

痩せないといけないから始めたウォーキングは続かなくても、散歩は勝手に続いて、気づいたらウォーキングのときよりもずっと遠くまで歩いていたこともよくあった。

公園のトイレの外壁や造りが思いのほか可愛いことに突然気づいたり、すずらんの咲く期間を実際に毎日見て知ったりした。よく会うわんちゃんの物語を勝手に作ったりもした。

それまで何度も通ってきた道なのに、初めて気づくことがたくさんあった。

小さい木に出会った

たくさんのものを受け取っていたし、何より楽しかった。やってみたいことや新しいアイデアも歩いている最中に浮かぶことが多かった。
 
あのときは、ふわっとした時間をすごしていた気がする。

仕事がない不安も、この先がどうなるんだろうという心配もたくさんあった。でも、考え続けてもしょうがないと思えてくるような長い期間で、答えがすぐ出ることもなさそうだった。だから、いったん諦めて空っぽの状態でいられたのかもしれない。確かに、受け取るにはそれだけのスペースが必要だと思う。

次々に考えないと追いつかない日々はあるけれど、もしまたふわっとした時間をもらったら、心配ごとも一緒に、いったんそのままふわっと過ごせたらと思う。

プロフィール

石川紅奈

いしかわ・くれな|高校1年生の夏にウッドベースを始める。国立音楽大学ジャズ専修に入学し、ベースを井上陽介氏、金子健氏に師事。2021年、『Off The Wall』(マイケル・ジャクソン)の演奏動画がYouTubeで250万回以上再生され一躍注目を浴びる。
2023年3月、ジャズの名門ヴァーヴ・レコードより小曽根真プロデュースの1stアルバム『Kurena』でメジャーデビューを果たし、ソロ活動の傍ら2022年にはピアニスト・壷阪健登とポップスユニット「soraya」を結成。2024年sorayaにて「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演し、これまで2枚のアルバムをリリースするなど、ポップスのフィールドでも頭角を現す。
2026年9月16日にセルフプロデュースとなる2ndアルバム『Garden』をリリース。その後、全国を巡るアルバムリリースツアーも決定している。

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