TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】「もの」

執筆:石川紅奈

2026年9月20日

私はものを捨てることがすごく苦手だ。

雑貨、古い置き物、衣類、昔使っていた文房具やノート、貝殻、チケット類、お菓子の包装紙、くだものや野菜に貼ってある小さいシールまで…。たくさんのものをとっておいてある。なので私の部屋やクローゼットが、すかすかに空いた状態になることは今までに一度も無かった。

でも、身軽に生きられる人への憧れはあって、試みる断捨離では多少は減っても、”使わないけれどとっておくもの”という箱がいくつも出来ていた。家族にはスペース的にも迷惑をかけてしまうし、捨てられない自分を好きでもないのに、ものを見るとどうしても捨てられない。

以前、アレッサンドロ・ミケーレの作品に触れる機会があり、ユーモアさや愛くるしさを感じるような魅力的なデザインに私は一瞬で心を掴まれてしまった。どうしてこういうデザインを作るのか気になって調べていたら、彼はかなりのものを収集している人で、ものを見るとそれがこれまでどんな物語を生きてきたかが分かると話していた。私はそれを見て自分が集めてきたものに会いたくなり、クローゼットやコレクション、ノートを見返す時間を過ごしてみた。

いつのまにか、捨てていかないと、次に早く行かないと、という気持ちになっていたけれど、紡いできたものから組み立てられることはあった。それをきっかけにできた曲は、有り難いことに新しいアルバムにも収録させていただくことができた。

昨年、大好きだった祖母が亡くなった。おしゃれで、自分の世界を持っている女性だった。いつも家は綺麗に片付けてあったけれど、押し入れの整理をしていたら、雑貨、古道具、パンフレット、あらゆるものが出てきた。こんなにとってあるとは知らず、まるで自分のクローゼットをみているようでびっくりした。でも、嬉しかった。好きなものは大切にしていこうと思った。もちろん、ほどほどに整理をしながら…。

プロフィール

石川紅奈

いしかわ・くれな|高校1年生の夏にウッドベースを始める。国立音楽大学ジャズ専修に入学し、ベースを井上陽介氏、金子健氏に師事。2021年、『Off The Wall』(マイケル・ジャクソン)の演奏動画がYouTubeで250万回以上再生され一躍注目を浴びる。
2023年3月、ジャズの名門ヴァーヴ・レコードより小曽根真プロデュースの1stアルバム『Kurena』でメジャーデビューを果たし、ソロ活動の傍ら2022年にはピアニスト・壷阪健登とポップスユニット「soraya」を結成。2024年sorayaにて「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演し、これまで2枚のアルバムをリリースするなど、ポップスのフィールドでも頭角を現す。
2026年9月16日にセルフプロデュースとなる2ndアルバム『Garden』をリリース。その後、全国を巡るアルバムリリースツアーも決定している。

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