TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】旅と朝ごはん

執筆:中村友貴

2026年9月17日

 生活に旅が必要な性分である。昔は、行きたい店をリストアップして1日に出来るだけたくさん回るような旅をしていた気がするが、自分で店を始めてからは不思議とそういう旅はしなくなった。ただ、やっぱり旅先で気になるのは「朝から開いている店」。朝ごはん屋をやっている職業柄、朝の店だけは調べて行くようにしている。

 熊本はモーニング・ラヴァーにとても優しい街だ。玄関口、熊本駅の目の前には『タラチネ』がある。一見スタンダードに見えながらもたまに小鉢に変化球もある、多国籍で愛の溢れた母の味が嬉しい。その近所の『ペカンサンド』も好きな店で、濃厚なピーカンナッツペーストと厚切りベーコンのサンドは大好物。街の中心地から少し行ったところにある『POMBO』も、旅の香りのする手の込んだ料理で朝から幸せな気持ちにさせてくれる。あらゆる朝食屋のなかでも特に憧れてるのが田崎市場内にある『平六食堂』。大盛りごはんと、シチューのように煮込まれたモツ煮、漬物と味噌汁のついたシンプルで潔いホルモン定食は、不動の個人的ナンバーワン朝ごはん。

タラチネの「Aセット」。日替わりの小鉢を追加して豪華に。

この過不足無さが完ぺき! 平六食堂の「ホルモン定食」。

 久留米と尼崎に行った時に見つけた市場内の食堂もそれぞれ良かったし、鹿児島の魚市場にある食堂も、休みの日の朝にはやっぱりよく行ってしまう。小倉の朝ごはんは、24時間営業の酒場で食べたクッパも、老婦人が営む食堂で食べた名物ぬか炊きも、好きだったな。広島を旅したときに出会った『morning.JUICE STAND』と店主アキラさんのカッコ良さにはシビれた。

 最近は博多駅から歩いて行ける距離にある、朝6時オープンのラーメン屋の美味しさと佇まいが印象深い。そうそう、福岡は『Pusis』の朝ごはんが素晴らしかった。予約制・撮影禁止という心理的ハードルを悠々と超えてくる美味しい食事とドリンク、グッドバイブスな接客は、気持ち良さと凄味が同居していて、笑顔で店をあとにさせてくれること間違いナシ!

 僕の営む『食堂 湯湯』に来てくれたことで知り合って、ポップアップにも呼んでくれた京都の『MEMEME COFFEE HOUSE』は朝の店特有の、あの特別な時間が濃厚に流れている。洒落た店だが、本当の意味での洒落もそこかしこに散りばめられていて、京都という特異な土地にあってユーモアとアイデアで時流に抗っているアティチュードが何よりも格好良い。似たテイストの店はあっても、この態度はきっと唯一無二。そしてもちろん、ちゃんと美味しいのが嬉しいよね。

写真には写らないすみずみにユーモアと反骨の宿る『MEMEME』。ここで過ごす朝はきっと特別な時間になるだろう。

 と、こんな感じで思いつくままに印象的だった朝の店のことを書いてみたけれど、おすすめ! 絶対行ってほしい! というよりは、もし旅先やあなたの住む街で、たまたま出合って朝からお腹がすいていたら、足を運んでみてほしい! くらいの感じです。そこに暮らして通っている人たちの生活が一番だし、お店やローカルには見えないルールもきっとある。そんな日常に少しお邪魔して、旅情が交差していく時間がたまらなく好きなのだ。まだまだ行ったことのない朝ごはん屋だらけだナ。

プロフィール

中村友貴

なかむら・ゆうき|1991年、鹿児島県生まれ。大学進学を機に茨城県つくば市へ移り、6年ほど在住。2017年に鹿児島に戻り、カフェの店長を務めたのち、2023年から鹿児島市名山町に『食堂 湯湯』をオープン。朝7時30分から開店する食堂内で、本、CD、レコード、器、食材などの販売と、展示やLIVEの企画を行っている。

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