原作は古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスの同名叙事詩だ。「トロイの木馬」作戦によってトロイア戦争に勝利したオデュッセウスたちが、妻と息子が待つ故郷イタケへの帰還を目指す10年に及ぶ果てしない旅路を、監督のノーランは見事に自分色に染め替えている。実際、これまでのノーラン作品との共通点はすこぶる多い。ネタバレになるので詳述は控えるが、「帰還」というテーマは『インターステラー』を想起させ、その過程で『メメント』のようにオデュッセウスの「記憶喪失」が問題となる。彼と妻を結びつける『インセプション』のコマのような「小物」の登場も見逃せない。「トロイの木馬」の内部で男たちが窮屈そうに過ごす描写はほとんど『ダンケルク』の水没する船のようだし、そもそも一人の男のしでかしたことが世界をそれ以前と以後に分断してしまうという物語は『オッペンハイマー』だ。その意味で本作は、ノーランの現時点での集大成と言えるかもしれない。9月11日より公開。
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