ライフスタイル

家の猫の話 Vol.32/文・ピエール瀧

2026年10月5日

家の猫の話


photo & text: Pierre Taki
edit: Ryoma Uchida

我が家の猫たち、本日も快調に箱に納まって過ごしております。

最近のお気に入りの箱は、岡山の友達が送ってくれたブドウ(ピオーネ)が入っていた箱。パッと見は「ちょっと小さすぎて窮屈なんじゃないの?っていうか入れます?」というサイズなんですが、実はそのくらいの箱サイズの方が奴らは好み。いつの間にかミッチミチに身体をねじ込んでパンパン状態になり、箱の縁にちょいと頭を乗せてスヤスヤと寝息を立ててたりします。

この『箱パンパン猫』、遭遇すると毎回鉄板で面白いです。入ってる箱の絵柄とのコントラストの味わいもさる事ながら、気づくといつの間にか納まっているという、こちらの虚を突いてくる可愛らしさと面白さ。そして、決して入れられているワケではなく、自ら進んで入りにいってからの窮屈という、不条理ノリツッコミギャグとしても完成度が高いと言えます。

我が家の猫の場合だと、リビングに持参した箱にはほぼ100%入ります。巨大なものから小さいものまでとりあえず。たとえ身体を横たえる大きさがない箱だったとしても、一応なんとか座ってみるところまでは試しています。もうフェティッシュの領域とも言えるくらいの徹底ぶりですが、なぜ猫はそんなに箱に入りたがるのでしょうか?

ネットで調べてみると様々な回答が並んでいました。

野生の猫の名残で狭いところにいた方が安全で落ち着くからであるとか、隠れた状態から頭だけ出して周囲を観察している状況が狩猟に適しているとか、他にもいろいろなもっともらしい理由が列挙されていましたが、自分がなんとなく腑に落ちたのは「段ボールがあったかいから」という理由でした。

実は猫が快適だと感じる温度は30度~36度らしいです。人間にとって「結構暑いな」と感じる温度こそが猫にとっての快適ゾーン。夏でも日向ぼっこしてますもんね。ということは、人間が快適に過ごすために温度調整されたリビングは、我が家の猫たちにとっては肌寒く感じているのかもしれません。で、そこに登場するのが人間が時折ニヤニヤしながら持ち込んでくる段ボール。断熱効果抜群の素材な上に、中に入ってみっちりパンパンになれば、より快適温度に近い状態を作り出せるというワケです。

そう考えると、確かにブイヨンは夏でもオイラの傍までやってきて太ももにくっついて座るし、コロッケはエアコンが効いていても嫁の膝に乗ってくるし、扇風機を浴びているパジャマ姿の娘の股の間で丸くなっています。「こいつら暑くないのかな?」なんて思って眺めていましたが、全然逆でした。理由は寒いから。ガーン!結構ショック!

「種を超えた愛情を家族単位で育んできてましてね……」なんて思っていた猫とのスキンシップが、実はただの寒さしのぎが最大の理由だったかもしれないのです。超複雑。本当にそれだけなのかい?ねえ、キミたち……。

そう思ってコロッケを探すと、「コミックスが全巻揃ってからまとめて買ったれ!」と思いながらすっかり忘れていた、ジョジョリオンの11巻~最終巻が配達されたアマゾンの段ボール箱の隅っこの方に納まってうっとりしていました。コミックスを枕がわりにして。その隙間をつきますか、流石ですね。またしても虚を突かれましたよ。

プロフィール

ピエール瀧

ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』『ガス人間』(Netflix)、映画『宝島』(大友啓史監督)映画『ホウセンカ』(木下麦監督)のほか多数出演。映画『NEW GROUP』(下津優太監督)公開中。

電気グルーヴ公式ウェブサイト
https://www.denkigroove.com/