ライフスタイル

家の猫の話 Vol.31/文・ピエール瀧

2026年9月5日

家の猫の話


photo & text: Pierre Taki
edit: Ryoma Uchida

孤高の天真爛漫女王だったブイヨンがキャラチェンジをし、最近では“お腹撫でさせてくれるっ子ちゃん”となってオイラに懐いてくれるようになった話は以前書きました。

最近ではその距離もさらに縮み、オイラがソファーに座って野球を観ていたりすると、ソファーの座面にヒョイと飛び乗ってきて「さあ、いつものアレを頂戴」と言わんばかりに、まず太ももに脳ぶつ(脳をぶつけてくる甘えの頭突き)をかまして催促し、お腹をこちらに向けてコロリと横になって欲しそうな眼差しを向けてきます。

そうなると、オイラはブイヨンの密度みっちりの毛皮のような手触りのお腹を撫でて、フェティッシュなスキンシップを楽しむのですが、同時に医者気分でブイヨンの腹を触診して健康状態も確認しています。ブイヨンは以前、尿管に石ができてしまって手術をした経験があるので、定期的に下腹部あたりをマッサージしながら、妙な違和感や反応がないかを確認しているのです。
「今日も大丈夫みたいですね」なんつって。

そんな中、先日興味深いニュースが飛び込んできました。

日本のAIM研究所の宮崎徹所長が、猫の寿命を伸ばしてくれる可能性がある「FeliAIM」という猫用の腎臓病治療薬の認可を農林水産省に申請したというものです。

猫はもともと乾燥地帯で生息していた種族のため、水をあまり飲まず(確かに)、濃い尿を排出する性質があります。そのため腎臓に負担がかかりやすく、老齢の猫などは常に腎臓病の危機に晒されてしまいます。猫のペットフード売り場に行くと「腎臓ケア」などの文字が各社の商品のパッケージに踊っているのはそういう理由からです。

AIMというのは血中タンパクの一種で、通常はIgMという抗体とくっついた状態で血中に存在しています。体内で老廃物や死細胞(要するにいらないもの=ゴミ)が発生すると、IgMからAIMが切り離され、それらのゴミと結合して目印となり、マクロファージ等の貪食細胞(体内の掃除屋連中)を引き寄せて食べて処理してもらいます。要するに「こいつらゴミだから印つけとくね。ゴミ処理班は出動して、印(AIM)ついてるやつを片っ端から処理して」って感じですね。

しかし猫の場合、どういうわけかこのAIMがIgMから切り離されにくく、ゴミに対するマーカーを付けきれない。そのために腎臓にゴミが溜まりやすくなってしまい、腎臓病の原因になってしまうのです。腎臓は体内の濾過装置ですから、フィルターにゴミが溜まりやすい状況は好ましくないのです。詰まっちゃうと大変ですから。

宮崎所長が開発したFeliAIMは、体外から猫の血中にそのAIM(ゴミマーカー)を薬として投入し、ゴミ処理班に「うわ!ゴミ結構あんじゃん!」と気づかせてケツを叩き、腎臓(フィルター)に流れ込むゴミを減らすモノと言えます。今ネットで詳しく調べたら、学研からAIMの研究の書籍が出ているらしく、その帯には「ネコの寿命が2倍になるかもしれない」と書いてありました。すごい!飼い猫の平均寿命は15~16年。それが本当に倍になるならマストです。

現在認可申請中ということなので、まだ動物病院で注射を打てる状況にはない模様ですが、飼い主としては今後の動向を見守る価値は十分にあると言えます。

プロフィール

ピエール瀧

ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』『ガス人間』(Netflix)、映画『宝島』(大友啓史監督)映画『ホウセンカ』(木下麦監督)のほか多数出演。映画『NEW GROUP』(下津優太監督)公開中。

電気グルーヴ公式ウェブサイト
https://www.denkigroove.com/