TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】人生、突き抜けずに40代 ②

執筆:五明拓弥(グランジ)

2026年9月22日

芸人として突き抜けるタイミングを2度逃し(詳しくは【#1】)、詰みの気配を纏っていた2015年。
久しぶりに相方のひとり、遠山から連絡がきた。

「五明、CMつくるの興味ない?」。

彼は人気ラジオ番組のパーソナリティをやっていて、そのご縁でとある広告賞の審査員をやっていた。そこで「ラジオCMを作ってみないか?」と誘いを受け、僕にも声をかけてくれたのだ。
CMのことは全くわからないが、考えることは好きだし時間もある。やらない理由がない。
後日、CMプランナーの方々に混ざり、クライアントのガス会社に行った。
作ってきたラジオCMの台本を自ら読み、人生ではじめてプレゼンをした。
その結果、数本の案が採用されることになり、実際にラジオで流れることになった。
しばらく経ったある日、僕が作ったラジオCMがいくつかの広告賞を受賞したと連絡をもらった。
『M-1』や『キングオブコント』といった本業の賞レースでは一切結果が出せなかったので、お笑いでなくても自分の作ったものが評価されて嬉しかった。

いただいたトロフィー

業界外の人が受賞することは珍しいようで、広告界の大物たちと僕が対談をする書籍が出版されることになった。CMの仕事も増え、一人でのラジオ番組も決まった。

すでに35歳、ここで突き抜けたい。

夜9時から90分担当していたラジオ番組は、2年後には深夜1時~5時の4時間生放送を一人で喋る激務枠に移動。書籍は発売して8年経った今でも重版の連絡はきていない。
突き抜けたかった。

劇場出番やラジオ番組のレギュラー、年に数回いただくCMの仕事をしながら慎ましい生活をおくっていた2020年、コロナがやってきた。
終わりの見えない連休、刺激のない毎日。
僕と似た境遇にいたミュージシャンの友人、group_inouのimaiさんと自動車の免許合宿に行くことにした。

教習所をどこにするか選んでいるときは、ふたりともキャッキャして楽しかったのに。まさかあんな2週間になるとは思ってもいなかった。

『初日に全ての教本を紛失』

『支給された弁当のおかずが薄いカツ2枚とハム半切れ』

『友人だけ落ちる仮免試験』

『鬼教官はもういないと聞いていたのに』

『警報級大雨の中で卒業検定』

『教習車に同乗する試験官が鬼教官の卒業検定』

『片方だけ落ちる卒業検定』

仮免試験に落ちた直後のimaiさん

この一生忘れられない思い出をかたちに残したくなり漫画を描くことにした。
今まで漫画などほとんど描いたことがなかったが、時間は腐るほどあるコロナ禍。
持っていたiPadで、見よう見まねで描きはじめた。

4か月後に全19話、275ページの漫画が完成した。

1話ずつSNSにアップ、更新するごとに増える反応、自費出版、BEAMS JAPANでのポップアップ、全てがいい流れで転がっていき、出版社が声をかけてくれたのが2022年。

僕は41歳で漫画家デビューすることになった。

『39歳の免許合宿~ストーリーは自分で創れ~』

それから丸4年が経つ現在。

変わったのは少し増えた体重と、もみあげに出てきた白髪くらいか。
あの頃、憧れていた将来じゃないけれど。
今日もごはんがおいしい。

プロフィール

五明拓弥

ごめい・たくや|お笑いトリオ・グランジのメンバー。芸人として活動する傍ら、広告にも携わりTCC新人賞などの広告賞を受賞。「ごめたん」名義で漫画家としても活動し、著書には『39歳の免許合宿』『カーシェアグルメドライブ』などがある。『カーシェアグルメドライブ』はBSで映像化。

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