薯版画(いもはんが)って知ってる? ジャガイモの断面を彫り、絵の具をつけて紙に摺る版画のことだ。そんな薯版画を独学で50年以上にわたって制作してきた現在86歳の山室眞二さんの展覧会が、『神奈川県立近代美術館 鎌倉別館』で開催中だ。小さなジャガイモを版にするため、大きな風景ではなく、草花、虫、鳥などがモチーフ。北鎌倉に暮らす山室さんが、庭や近くの里山で見つけた動植物を細かく観察し版画にしている。同じ色を重ね摺りしたり、より繊細な彫りを施したりと表現は年々磨かれ、年齢を重ねて視力などさまざまな壁に直面しながらも、作品はますます奥行きを増している。
展覧会タイトルの〈かまくら博物誌〉は、ジュール・ルナールの『博物誌』に倣ったもの。暑くて外に出るだけでも嫌になっちゃう季節だけど、限られた命を精一杯生きる鎌倉の小さな動植物に触れると、最近見過ごしていた草花の輝きにも自然と目が向く。気持ちだけでも涼しくなるはずだ。
インフォメーション
山室眞二の薯版画〈かまくら博物誌〉 / 併陳 コレクション 暮らしの中で
会期:5月30日(土)〜9月27日(日)
休館日:月曜日(7月20日、9月21日を除く)
開館時間:9:30〜17:00 (入館は閉館の30分前まで)
入館料:一般¥700(600)、20歳未満・学生¥550、高校生¥100、65歳以上¥350
*( )内は20名以上の団体料金です。
場所:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館 神奈川県鎌倉市雪ノ下2-8-1
Official Website
https://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2026-yamamuro-shinji-with-collection/
「分ける、混ぜる、また分ける(曖昧に)」に行く。
夏の間じっくりと旨みを詰め込んだ食が街に並び、旬の味覚を味わい尽くす準備は万端。幸せな季節は目前な一方で、食べ物とは一度期限が切れれば廃棄され、名称は“ゴミ”となる現実がある。世の中の秩序としてある...
ムーンストラック・カルティベーション vol.2「『図案』の森に潜る 近代日本の視覚文化アーカイヴ逍遥」に行く。
POPEYE Webシニアエディターでもある編集者の井出幸亮さんが立ち上げたリアルイベントプロジェクト「Moonstruck Cultivation(ムーンストラック・カルティベーション)」。芸術/...
『パンク・ガーデニング宣言 エコロジカルで型破りな庭園論』を読む。
フランスの造園家エリック・ルノワールが提唱する「パンク・ガーデニング」は、人間本位で植物にとっては地獄でしかない「美しい庭」という考え方にまず反旗を翻す。そして、完璧な管理をあえて手放し、植物本来の...
『はいつくばって』を読む。
ミランダ・ジュライによる2冊目の長編小説だ。主人公はジュライ自身を彷彿とさせる45歳の女性アーティスト。とある小旅行をきっかけに、中年期特有の人生の悩みに振り回される彼女の姿が、夢みがちであるが故の...
『ルックバック』を観る。
藤本タツキによる同名漫画を実写化したのは、『箱の中の羊』の記憶も新しい是枝監督だ。二人の少女、藤野と京本がコンビを組んで漫画家を目指すその原作の物語を、是枝監督はかなり忠実に実写へと昇華させている。...