カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.7

ミネラル

2021年12月10日

text & edit: Shogo Kawabata 
photo: Akira Yamaguchi
2022年1月 897号初出

宝石以上の魅力を放つ、原石たちの景色

 まばゆいばかりのジュエリーたちは、いわずもがな、もともとは自然に生成された鉱物たちを美しくカットし、研磨したものだ。そんな当たり前なことだけれど、そのジュエリーに加工される前の天然の姿については、意外と知らないことが多い。岩石の中で生成された結晶の姿は、ただ美しいだけでなく野趣にも溢れ、その産地の情景にまで思いを馳せることができる。特に母岩が残る標本は産状がよくわかるため、ロマンも5割増しだ。また、そんな鉱物を標本として見ると、違った楽しみも見えてくる。例えばエメラルドとアクアマリン、これは学術的な分類上はベリルという同じ鉱物。その中でクロム成分などによってグリーンに発色しているのがエメラルドで、ブルーに発色するものがアクアマリンと呼ばれている。これはジュエリーの世界での、いわば通称だ。他にもルビーとサファイアも実はコランダムという同じ鉱物だったりと、実は知っているようで知らないことだらけの世界なのだ。

Zoisite var. Tanzanite

ゾイサイト族のタンザナイトという変種名はティファニーが「タンザニアの石」という意味で名付けたコマーシャルネーム。

Beryl var. Morganite

ベリル族という鉱物でピンクのものはモルガナイトと呼ばれる。モルガン財閥の創始者であり宝石愛好家だったJ.P. モルガンへの献名。

 Pyrite

硫黄と鉄で構成された硫化鉱物の一種で、金と見間違えてしまうことがあるため、「愚者の黄金」と呼ばれることも。

Beryl var. Aquamarine with Albite

ベリル族で、水色~青のものがアクアマリンと呼ばれる。そんな中でも、柱のようになっているものを柱状結晶と呼ぶ。

ourmaline var. Cuprian Elbaite

ブラジルのパライバ州で採れたトルマリンは、独特なネオンカラーの発色となり、今、最も人気が高い鉱物。通称パライバトルマリン。

Beryl var. Emerald

ベリル族の緑のものがエメラルドと呼ばれる。母岩に埋もれているものを、うまく結晶を露出させた景色が魅力の標本。

Corundum var. Sapphire

コランダム族は、赤になるとルビーと呼ばれ、赤以外の色がサファイアと呼ばれる。ルビーとサファイアも同種の鉱物なのだ。

Rhodochrosite on Manganite

黒のマンガナイト上に共生する赤いロードクロサイトの結晶。母岩との色のコントラストが非常に美しいコレクターズアイテム。

Fluorite

ハーバード大学の展示品だったもの。こうした展示品を販売することで、博物館の維持や入れ替えの費用を賄う。

 Fluorite

フローライトはカラーバリエーションが豊富。特に同結晶内で2色展開するものはバイカラーと呼ばれ、人気が高い。

Rhodochrosite

8と同じ産地だが、1番鉱山と2番鉱山、といった感じで僅かに産地が異なると、形状や色味も異なり、産地違いで集めたくなる。

 Fluorite

日本ではフローライト人気が非常に高く、なかでも人気なのがこのイングランド産のグリーンのフローライト。

Quartz var. Amethyst

クォーツの中で紫のものがアメシストと呼ばれる。日本含め、世界中で産出し、その価値は数百円から数百万円とピンキリ。

Beryl var. Heliodor

ベリル族の中で黄色のものがヘリオドールと呼ばれる。馴染み深いベリルの中でも見かけることの少ない色味。

Tourmaline var. Elbaite

鉱物標本の中でも特に人気の高い色合いがブルーやブルーグリーン。これはさらに赤も加わる人気の石で、非常に高価。

Quartz

水晶は世界中で採れない国はないほど一般的だが、なかでも照り艶が素晴らしいと古くから定評のあるスイス産の標本。

これらの鉱物は、日本有数の収集家であるオーナーが厳選した原石を扱う『PEANUTS MINERALS』のコレクション。