カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.2

線織面型模型

2021年7月26日

text & edit: Shogo Kawabata
photo: Akira Yamaguchi
2021年8月 892号初出

糸が織りなす数学的世界

数式を立体化する「数理模型」。今回紹介するのは、数理模型の中でも、糸をつかってその数式を表現する「線織面型」と呼ばれるタイプのもの。なめらかな曲面を表現している糸は、実はそれぞれすべて真っすぐに張られている。こうした直線が連続することによって表現される曲面は「線織面」と呼ばれる。線が曲面を作り、空間を構成する様を、視認しやすい鮮やかな糸を編み込むことで表現しているのだ。

どれも数学的な意味を持つ様々な模型たち。もともとは教育目的に作られたものだが、オブジェとしても非常に美しい。

 上写真の右端にあるのは、二重多面体模型と呼ばれるもの。5種類の正多面体の各面の中心を結ぶことで、また別の正多面体が内側に現れる「双体関係」を表した模型だ。こうした模型たちは、教育目的に作られたものだが、近年3Dデータに置き換わり、使われる機会は少なくなってしまった。二重多面体模型はわずかながら現在も製作されているが、線織面型数理模型は、今はもう作られていない。製作元である加藤数物製作所では復刻を計画しているが、特殊な糸の編み込みができる職人が今はもうおらず、残念ながらまだ実現には至っていない。美しい数学的曲面を織りなすオブジェとして蘇る日が待ち遠しくてならない。

INFORMATION

加藤数物製作所

前回に引き続き、二重多面体模型などの製作を行っているのは、大阪の八尾市にある加藤数物製作所。美しい数理模型の価値を再評価し、未来へとつなげていくために、自社のアーカイブからの復刻に取り組んでいる。加藤数物製作所☎072·922·2843