カルチャー
机の上のサイエンス。Vol.5
カタゾウムシ
2021年10月21日
text & edit: Shogo Kawabata
photo: Akira Yamaguchi
2021年11月 895号初出
煌めく斑紋の生ける宝石。
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/10/DMA-210909_003-1600x2400.jpg)
ゾウムシ科のカタゾウムシ属に分類されるカタゾウムシ。フィリピンを中心とする東南アジアなどに分布する甲虫だ。ひょうたん型の体には、ドット柄などの美しい模様が、キラキラ輝く鱗片で描かれており、まるで宝石のよう。実際、装飾品にも使われている。種や個体によって、様々な模様があり、非常にコレクション心をくすぐられる昆虫だ。日本にも八重山諸島にクロカタゾウムシが分布していて、これはカタゾウムシの分布の北限なのだが、残念ながら体は真っ黒で、模様はない。
そして、宝石のようなのはその美しさだけではなく、外骨格が石のように硬い。上羽は癒着しており開くことはできないが、それによりさらに強度が増している。あまりに硬くて標本用の虫ピンも刺すことができないため、標本を作るときは、まず台紙に貼り、その台紙に針を刺して標本箱に固定する。鳥も硬すぎて食べないといわれており、台湾南部の蘭嶼島の先住民の間では、指の力だめしのために、このカタゾウムシを潰せるかどうかを競うという習慣もあるほどだ。その硬さの秘密は、細胞内の共生菌ナルドネラ。それらが作る物質を利用して、外骨格のクチクラ層を非常に硬く仕上げているという研究結果が発表された。
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