カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.28

ローマングラス

2023年10月3日

text & edit: Shogo Kawabata
photo: Akira Yamaguchi
2023年10月 918号初出

1000年以上の時が育んだ輝き。

ローマングラス
おそらく2つとも割れた瓶の底の部分だと思われるローマングラス。これだけ鮮やかに虹色が出ているものは珍しい。価格はサイズや虹色の出方によって様々。各¥9,500(ハンズ名古屋店10F地球研究室☎052·566·0109)

 ローマ帝国の時代に作られたソーダガラス製の壺や水差しなどの日用品が、1000年以上もの長い時間土に埋もれ、ガラス成分と土壌の成分が「銀化現象」という化学反応を起こすことで、虹色に輝くようになったローマングラス。とはいってもガラスが銀になるわけではなく、ガラスの成分である珪酸などが、土壌の鉄、銅、マグネシウムなどと化学反応を起こし、ガラスの表面を膜状に覆ったもの。これが幾重にもかさなると、極薄のガラス膜がミルフィーユ状になり、光が当たるとプリズムのように屈折して、虹色に輝くのだ。イリデッセンスとも呼ばれ、昆虫の玉虫やモルフォ蝶の輝きと同じ原理だ。

 この銀化現象は限られた環境下でしか起こらず、とても稀少。宝石と同じような扱いで市場に流通しており、そのままディスプレイされたり、アクセサリーの材料などに使われている。