カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.59

ブローチハムシ

2026年5月3日

%28%7B%20atariName%3A%20%22sot_logo.psd%22%2C%20saveFileRef%3A%20new%20File%28%22/AF10D01/P-%25E3%2580%2580%25E3%2583%259D%25E3%2583%2591%25E3%2582%25A4/12119229%2520%25E3%2583%259D%25E3%2583%2591%25E3%2582%25A4%25E3%2580%2580%25EF%25BC%2591%25E6%259C%2588%25E5%258F%25B7%25EF%25BC%2588%25EF%25BC%2583%25EF%25BC%2598%25EF%25BC%2599%25EF%25BC%2597%25EF%25BC%2589/134-135_CC2019_0061/134-135%25E5%2588%2586%25E8%25A7%25A3%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F/DMA-sot_logo.psd%22%29%7D%29

机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata 
2026年5月 949号初出

虫そのものが装飾品に使われた、真の「ブローチハムシ」。

1930年代に採集されたブローチハムシ (Polychalca punctatissima)の標本。ブラジル・バイーア州産。(花滝 www.cogazo.com

 これこそ、「ブローチ」という装飾品の名前が冠されるにふさわしい存在。南米に数多く生息するブローチハムシ類の中でもとりわけ美しいのがPolychalca punctatissimaだ。19世紀後半のヨーロッパではエジプト趣味が流行し、太陽神の象徴である昆虫のスカラベ(フンコロガシ)をモチーフにした装身具が盛んに製作された。しかし、本来のスカラベの多くは黒色で、虫そのものを宝飾品として用いるには視覚的魅力に乏しかった。そこで選ばれたのが、まばゆい金属光沢の体を持つ本種である。分類学的にはハムシであり、スカラベではないのだが、似たような丸みを帯びたフォルムであることから、一般の購買層にその差異は問題にされなかったようだ。装飾品への加工用に、脚や触角が除去された個体がヨーロッパへ輸出され、リングやブレスレットへと姿を変えた。写真の標本はエジプトブーム後半の1930年代に渡欧したもので、四肢を欠く姿が当時の用途を物語る。構造色により、約1世紀を経た今でもなお宝石のような輝きを放っている。