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車体のカスタムパーツをオリジナルで作るメーカー・ダムド。その道を極めんとしつつ、フェスも音楽レーベルもやってるの!?
DAMD
2026年6月9日
photo: Kazuharu Igarashi
text: Kento Nogami
illustration: Telly Sahara
2026年7月 951号初出
まさか『ワイスピ』の劇用車を作っていたとは。
〝ランエボ〟ことランサーエボリューションは、〝ワイスピ〟こと映画『ワイルド・スピード』シリーズの『X2』で、主人公のポール・ウォーカーが乗っていた車。実は、あのド派手なボディキットもダムドが製作していたって知ってた? 「三菱ディーラーと、ランエボのエアロパーツを共同開発していたら映画で使いたいとオファーがあって、7セットも作ったんです。バンバン壊す端役かと思っていたら、まさか主人公の車だったとは(笑)」と初代社長の面髙正明さん。一体、その信頼を勝ち得た実力の背景には何があるのか。それは、「エアロバブル」真っ只中の’90年代後半とリンクする。車はステータスであり、誰もが愛車のドレスアップやチューニングに熱狂していた時代だ。ダムドは実に多様なデザインを手掛け、「ブラック×メタル」、「インペリアル」、「ロコボーイ」といった独自のシリーズを展開・量産。東京オートサロンでは、お揃いの黒いジャケットを着たスタッフが群れをなすダムドのブースが大盛り上がりだったそう。このブームに、大手自動車メーカーはすかさず反応し、ダムドにラブコールを送る。そうしてトヨタが’97年に立ち上げたカスタムブランド・モデリスタのデザイン・開発を手掛けたり、’08年のリーマンショックによって訪れた厳しい時期にも、その後に登場し大ヒットとなった新型SUV「CX-5」のディーラーオプションのカスタムパーツをマツダから任されたり。さらにスバルの車用に製作したオリジナルのステアリングホイールもスマッシュヒット。大手メーカーとのこの時期の厚い取り組みによって、品質と供給力がグンと向上したとか。そして、その動きと同時に、’97年にラスベガスの世界最大のカーショー「SEMA」に作品を出展。アメリカのリアルに飛び込むことでさらに技術に磨きをかけたようだ。
車のカスタム、だけじゃなくパーティも。
「ダムドパーティ」の会場風景。
フェスの主催や音楽レーベルの設立、はたまたオーナーとの旅行!? 今のダムドは、カスタムカーブランドという垣根を越えて、オルタナティブ路線を突き進んでいる。その仕掛け人が、2017年から社長に就任した面髙翔五さんだ。ビジョンはとてもクリアで、「人の心と人生に豊かさ・彩りを与えるのが使命だと思っています」と語る。車はカスタムしなくても走るからこそ、ワクワクするような付加価値をどれだけプラスできるかを大切にしているそう。例えば、音楽ライブやフード、ワークショップを楽しめるイベント「ダムドパーティ」もその一つ。オーナー同士、オーナーと作り手の社交場でありつつも、オープンなイベントなので今では全国から人が集まるんだって。さらに、ドライブを彩る音楽。なんと「DAMD Sound Effect」として自社でレーベルを立ち上げ、アーティストの作品をリリース。プレイリストも「懐メロ」や「深夜のナイトクルーズ」など独自のテーマを立て隔週で更新している。そして、オーナーとキャンプや登山をする「ダムドヴィレッジ」も毎年秋に開催。「その車でどう過ごすか」まで提案しているところが、この会社の面白さ。
「ダムドヴィレッジ」でのキャンプの様子。ビールで乾杯!
「ダムドパーティ」のパンフレットと、会場で販売しているステッカー、タオル、バンダナといった限定グッズ。
ダムドが作るプレイリストのカバー。SpotifyかApple Musicで聴けるよ。
コレ、’80年代に手掛けたカスタムって本当!?
上の写真の赤いポルシェを見てほしい。これは1989年にダムドがフルカスタムした〝コンプリートカー〟。丸みのあるデザインは、現代のEVのようじゃない? 「当時流行りの角張ったフォルムじゃなくて、ツルッとさせて、未来的なデザインにしたかった」と語る初代社長の面髙正明さんは、鹿児島での少年時代はロケット作りやバイクに夢中。ミュージシャンを目指して上京後、FRP(繊維強化プラスチック素材)工場で技術を学び、大好きなバイクのカスタムをするために’82年に独立。だが、くしくも最初の仕事は車のボディキット製作で、そこから彼のカー・カスタム人生が始まったのだった。’86年にBMW M3をカスタムし、ブリスターフェンダーやサイドスカートなどをオリジナル仕様に。’91年のスズキ エスクードは、街乗りできる四駆を目指して、車体を低く。どれも時代を先取りしたデザインと言える。
名車の空気を感じる車たち。礎はアストロ。
今のダムドは、僕らが大好きな名車や旧車をオマージュしつつ、新車を独自にフルカスタムして販売している。例えば、ランドローバー ディフェンダー LD25をスズキ エブリイに落とし込んだ「EVERY little D.」。スズキ ジムニー初期型「LJ10」を現行のジムニーにアップデートした「the ROOTS」。このデザインコンセプトの原点は、’95年のスズキ ワゴンRだった。当時はシボレー アストロが大流行していて、街中を走り回っていたらしい。その姿を見かけた正明さんは、顔つきの似た軽自動車のスズキ ワゴンRをベースに、小さな和製アストロを作ると面白いんじゃないかと閃いた。カスタムといえばスポーツカー由来が全盛だったこの時代に、軽自動車をカッコよく見せるというアバンギャルドな発想を形にしたわけだ。そのイズムを継承するのが、息子の現社長・面髙翔五さん。自分の好きな名車や旧車のデザインを新車に掛け合わせることで、見た目はクラシック、中身は最新という〝夢のような〟車を作ってしまった。ストリート的な感覚で生み出すプロダクト、魅力的じゃないか。
タイを走るダムドのジムニー。中古でも買えるのだ。
日本車のシェアが高く、JDM(日本車仕様)カスタムのファンも多い東南アジア。そのストリートでも、コンパクト四駆のスズキ ジムニーは大人気だ。ダムドが手掛けたジムニーも進出中で、先日、タイの展示会を訪れた翔五さんは「ブースに僕らのコンプリートカーが展示されていて、本当に嬉しかった。今後はジムニー以外の車種でも世界で勝負することが課題ですね」と語り、現状には満足していないご様子。「『ダムドパーティ』をタイでも開きたいと取引先から話があって。カーミーティングのような小さな規模からのスタートになると思いますが」と、世界を見据えてさらなる動きを始めているようだ。もちろん海外に目を向けるだけではなく、足元である日本国内への仕掛けも抜かりない。昨年スタートした「ダムドアダプト」がそれだ。カスタム中古車販売のプロ『オートモーティブジャパン(AMJ)』とタッグを組んだ認定中古車プロジェクトだ。このサービス、実はユーザーのリセールバリューを守りたいという思いから始まった。「カスタムした車というのは、基本的には売る際に低い価格を付けられてしまいます。せっかくお気に入りの車を買っても、手放すときに価値が下がっていたら悲しいじゃないですか。僕らがカスタムした車が、市場で正しく評価される環境をつくれば、下取り価格が上がる。そうすることで、次の車への買い替えもスムーズになりますしね」と翔五さん。これはもしかしたら、カスタムカーの未来に希望を与える一手かも? 今はダムドの車には型落ちのモデルはないけど、数年後に「あぁ、あのときのダムドのアレ、よかったよね」という気分が生まれようものなら、狙いたくなっちゃうのだろう。
親子でダムド。うまくいく秘訣は……。
ダムドは初代の父・正明さんが立ち上げ、2017年からは息子・翔五さんが2代目として舵を握っている。気になるのは世代交代、そのバトンタッチの舞台裏だ。「タイミングですよ。やるなら早いほうがいい。他の会社の重役たちが引退する時期だったから、会社の未来を見据えて、次の世代の人間同士が新しい関係性を築けるようにバトンを渡しました」と正明さん。最初は、「2階の部屋に扉を付けるかどうか」なんて些細なことで大騒ぎする親子喧嘩が社内の恒例行事だったというから微笑ましい。試行錯誤もあったとは思うが「運営方針について反対をされたことはほぼない」という翔五さん。現在は見た目のアレンジだけでなく、車を買った先にあるライフスタイルまで見据えた提案をしている。初代はどう見ているのだろう。「すごくいいと思います。ありそうでない提案だし、カスタムカーブランドは時代に合わせて変わり続けていかないと。10年もたったら全く違うことをやっていてもいい。そのくらいじゃないと」。オフィスの室内に扉をなくした翔五さんは、「空調の効きが悪くて電気代は大変なんですけどね」と笑うが、会社の風通しがよくていい雰囲気だ。
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DAMD
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