カルチャー

かわじろうは『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』のキャラ造形に影響を受けている。

今日はこんな映画を観ようかな。vol.33

2026年9月5日

illustration: Dean Aizawa
text: Keisuke Kagiwada
edit: Togo Uchida

毎週、1人のゲストがオリジナリティ溢れる視点を通して、好きな映画について語り明かす連載企画「今日はこんな映画を観ようかな。」。今回は『あたらしいともだち かわじろう短編集』が第30回手塚治虫文化賞の短編賞に選ばれた漫画家のかわじろうさんが、クレイアニメ『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』を紹介してくれた。


今日の映画
『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』
(ニック・パーク監督、1993年)

ニック・パーク監督とアードマン・アニメーションズが手がけるイギリスの人気クレイアニメ『ウォレスとグルミット』の短編シリーズ第2作。発明家ウォレスは、相棒の愛犬グルミットの誕生日に、NASAが開発した「テクノズボン」をプレゼントする。その出費をカバーすべく謎めいたペンギンを、空いている部屋に下宿させるが……。


昔から手塚治虫や藤子不二雄、ディズニーみたいな、丸っこくデフォルメされたキャラクターが好きなんです。小学生の頃に観た短編クレイアニメ『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』に惹かれたのも同じ理由なんですが、今もなお興味の対象であり続けているという意味では、原風景のひとつと言えるかもしれません。

ストーリーは昔のノワール映画のパロディみたいな感じなんですよ。自称天才発明家のウォレスとその愛犬グルミットが暮らす家に悪いペンギンが侵入してきて、そいつをどう追い出すかって話なので、そこにすごく胸を打たれるわけではないかもしれません。ただ、キャラクターたちの見せる表情や、目にちょっとだけ入っている潤い、背中に漂う哀愁といった演出を通して、粘土の人形なのに感情を持って生きているように見えるのがすごいんです。

特に印象的なのは、家の中でウォレスたちが悪役のペンギンを追いかけ回すシーン。部屋の中に敷かれたプラレールのようなミニチュア電車にまたがってチェイスをするのですが、ハリウッド映画さながらのハラハラ感が、風に揺れる耳の動きなどで見事に表現されているんです。人形遊びの延長のようなノイズのない”箱庭”の中で、手に汗握る映画っぽいことをやってしまうバランス感に、「この世界観でここまでのドラマを描けちゃうんだ」という可能性を見せつけられた感覚があります。

自分の漫画の絵柄を見た人から、よく聞かれるんですよ。「エッセイ漫画を書いているんですか?」って。確かに、絵は青年漫画っぽくはありません。がんばれば写実的に描くこともできるんだけど、自分が描いていて気持ちいいタッチを探っていくと、どうしても丸っこい図柄になってしまうんです。それはきっと『ウォレスとグルミット』なんかの影響だと思います。ただし、物語自体は、大人向けというか、青年漫画誌に載ってもおかしくないようなものを扱っている。他の人はあまりやってなかったけれど、自分が昔から読みたかったそのふたつを合体させた漫画を、僕は目指しているんです。

語ってくれた人

かわじろうは『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』のキャラ造形に影響を受けている。

かわじろう

1992年、熊本生まれ。29歳のとき、小学生の頃に描いていたマンガを再び描きたくなり「ゲンロンひらめき☆マンガ教室」で1年間マンガの描き方を学ぶ。最終課題として提出した「下戸のソウルフード」では、最優秀作品に贈られる「ゲンロン ひらめき☆マンガ大賞」を受賞。初の作品集『あたらしいともだち かわじろう短編集』は、第30回手塚治虫文化賞に選ばれた他、「このマンガがすごい!2026」オトコ編で16位に、「THE BEST MANGA 2026 このマンガを読め!」で7位にランクインした。2冊目の作品集に『ロング・パス かわじろう短編集』がある。

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