カルチャー
駕籠真太郎は『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』からシニカルな笑いを学んだ。
今日はこんな映画を観ようかな。vol.20
2026年5月9日
illustration: Dean Aizawa
text: Keisuke Kagiwada
毎週、1人のゲストがオリジナリティ溢れる視点を通して、好きな映画について語り明かす連載企画「今日はこんな映画を観ようかな。」。今回のゲストは、アブノーマルな世界観で日本のみならず世界を魅了する漫画家の駕籠真太郎さん。紹介してくれたのは、70年代に一世を風靡し、「コメディ界のビートルズ」との異名も持つモンティ・パイソンが手掛けた『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』だ。
今日の映画
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
(テリー・ギリアム、テリー・ジョーンズ監督、1975年)
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
デジタル配信中
発売・販売元:株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 1974 National Film Trustee Company Limited. All Rights Reserved.
アーサー王の聖杯伝説をパロディ化した、シュールなギャグが炸裂するナンセンス・コメディ。神のお告げで聖杯(ホーリー・グレイル)の存在を知ったアーサー王が、配下の円卓の騎士たちと繰り広げるおバカな珍道中。
僕の漫画の核には、シニカルな笑いがあります。そこに間違いなく影響を与えているもののひとつが、イギリスのコメディ集団モンティ・パイソンです。
彼らに初めて触れたのは、15歳の頃。テレビシリーズではなく映画でした。『モンティ・パイソン・アンド・ナウ』『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』『ライフ・オブ・ブライアン』の三本立てを名画座で観たんです。ここまで不謹慎な笑いを本格的に目にしたのは初めてだったので、衝撃的でしたね。甲乙つけがたいですが、あえて1本を選ぶなら『ホーリー・グレイル』でしょうか。
アーサー王とその円卓の騎士が聖杯を探すという中世の伝説に基づく映画なんですけど、ナンセンスなギャクや不謹慎なブラックユーモアがとにかく多い。有名どころでいうと、伝説では馬に乗っていたはずのアーサー王が、馬に乗っているそぶりだけして、後ろの従者がココナッツで音を鳴らして馬の足音を表現するとか。馬を用意する予算がなかったための苦肉の策だったみたいですが、本当に意味がなくてくだらないんですよ(笑)。
だけど、彼らのシニカルさが最も発揮されるのは、人の死を笑いに変えてしまうところ。例えば、アーサー王と黒騎士の対決シーンでは、黒騎士が片腕を切り落とされても負けを認めず、最終的に四肢を全て切られてしまう。もしくは、中世の話なのになぜか現代の歴史学者が登場して解説を始めたと思ったら、通りがかったアーサー王一行に殺され、現代の警察が操作を始める。ビジュアル的には残酷なんだけど、発想はかなりバカバカしいんですよ。
モンティ・パイソンは、メンバーがいい大学を出ている知的なコメディ集団で、権力をおちょくっているのだとよく言われます。確かに、この映画のラストでは映画制作自体がメタ的な笑いに変えられたり、知性を感じなくもありません。だけどそれ以上に印象に残るのは、子供っぽい笑いなんですよ。世間でやっちゃいけないことになっているからこそ、あえてやることで笑いにするというか。今の僕がモンティ・パイソン的なものを目指して漫画を描いているかといえば決してそうではありませんが、やっぱり人間の思想の形成される時期に触れたものからの影響からは、なかなか逃れることができないんでしょうね。
語ってくれた人
駕籠真太郎
かご・しんたろう|1969年、東京都生まれ。奇想漫画家。1988年、『COMIC BOX』にてデビュー。エロ、グロテスク、猟奇的、スカトロ、人体破壊や人体改造といったサブカルチャージャンルを扱いながら、不道徳で、狂気的なだけに留まらないアブノーマルな世界観を描いている。2014年にはフライング・ロータス『You’re Dead!』のアートワークを手掛けて話題に。主な作品に『アヤカ十三死相』『大江戸浮世絵奇想天外』など。
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