カルチャー
大槻ケンヂは『イエスタデイ』を観て「パクられた(笑)、?」と思った。
今日はこんな映画を観ようかな。vol.18
2026年4月23日
illustration: Dean Aizawa
text: Keisuke Kagiwada
毎週、1人のゲストがオリジナリティ溢れる視点を通して、好きな映画について語り明かす連載企画「今日はこんな映画を観ようかな。」。今回のゲストは、ミュージシャンとして活動する傍ら、エッセイスト、小説家としての顔も持つ大槻ケンヂさん。紹介してくれたのは、ラブコメの巨匠リチャード・カーティスが脚本を手掛けた『イエスタデイ』だ。
今日の映画
『イエスタデイ』(ダニー・ボイル監督、2019年)
イエスタデイ
4K ULTRA HD + Blu-ray セット: 6,589 円/Blu-ray: 2,075 円/DVD: 1,572 円 (税込み)
発売・販売元: 株式会社ハピネット・メディアマーケティング
(C) 2019 Universal Studios and Perfect Universe Investment Inc. All Rights Reserved.
舞台は人々の記憶からビートルズが消えてしまった世界。なぜか彼らを覚えている売れないミュージシャンの主人公は、彼らの名曲を盗作してスターになっていく。しかし、彼が売れっ子になるうち、ずっと献身的に支えてくれていた女性マネージャーとの間に距離ができてしまうのだった。
意外に思われるかもしれませんが、僕はいわゆるラブコメ映画が好きなんですよ。ラブコメの作り手は、お決まりの枠がある中でいかにオリジナリティを出すかってことをすごく考えている。だから、自分が物語を書く上でも勉強になるところがあるんです。
じゃあ、『イエスタデイ』はどうオリジナリティを出しているかというと、ビートルズを大胆に活用しちゃうんですよ。というのも、この映画は主人公の青年が事故に遭って、目覚めたらビートルズがいない世界線に放り込まれていたっていう話なんです。彼は売れないミュージシャンなんですけれども、退院してすぐ友達からギターをプレゼントされて、なんとなくビートルズの「イエスタデイ」を弾く。すると、歌い始めた瞬間、彼自身の曲だと勘違いした友達の目が変わるんですよ。「なんでそんないい曲を今まで隠してたの?」って。これ、映画のオリジナルの楽曲だったら、うまくいかないと思うんですよ。だけど「ビートルズだったらしょうがないよね」って納得してしまう。上手いですよね。
その後、主人公はビートルズの曲を自分が創造したかのようにして発表してバカ売れしちゃうんですが、何人かビートルズを知っている人が登場するんです。主人公はその1人に付き纏われるんだけど、怒られるのかと思いきや、感謝される。「ビートルズの存在を知ってくれていて、素晴らしい音楽を世界に広めてくれてありがとう」って。ラブコメという枠を超えて、ビートルズを考えさせられる映画として興味深いですよね。
ちなみに、僕はこの映画を観てまず「パクられた(笑)、?」って思ったんですよ。というのも、僕がやっている筋肉少女帯に、「中2病の神ドロシー」って曲があるんですけど、これは「目覚めたら自分の好きなバンドがこの世に存在していなかった」ってことを歌っているから。まぁ、世の中には同じようなことを考える人がいるってことなんでしょうけど。でも、今の時代、ネットで発見された日本のサブカルチャーが、海外の映画界にも影響を与えているって話もあるらしいので、もしも仮にですけど僕の作った「中2病の神ドロシー」が『イエスタデイ』の元ネタになっているなら、これほど光栄なことはありません。まあ、冗談ですけど(笑)
語ってくれた人
大槻ケンヂ
おおつき・けんじ|1966年、東京都生まれ。1980年代後半よりロックバンド・筋肉少女帯のボーカルとして活動開始。音楽と並行して、エッセイ、小説、詩など文筆活動も展開。最新著『幻と想 03-25 大槻ケンヂ自選詩集』が発売中。
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