映像作家の倉知朋之介が、キメ顔や大袈裟な仕草に影響を受けた映画。
今日はこんな映画を観ようかな。Vol.3
2023.05.28(Sun)
photo: Kaori NISHIDA
illustration: Dean Aizawa
text: Keisuke Kagiwada
毎回、1人のゲストがオリジナリティ溢れる視点を通して、好きな映画について語り明かす連載企画「今日はこんな映画を観ようかな。」。今回のゲストは、映像作家の倉知朋之介さん。謎めいた言語を操る者たちをめぐるハイテンションな映像作品で注目を集める倉知さんが、キメ顔や大袈裟な仕草に影響を受けた映画について語ってくれた。
語ってくれた人
倉知朋之介

僕はいつも、映画を観るときに意識しちゃうことがあるんですよ。それが登場人物のキメ顔や大げさな仕草。そういう意味で初めてハマったのは、たぶん『少林サッカー』ですね。あのチープなまでの大袈裟さが大好きなんです。僕の作品を観たことがある人なら、「そのままじゃん」と言われそうですが(笑)。最初に観たのは、保育園に通っている頃だったんじゃないかな。以来、兄とDVDで観直しては、主人公がまんじゅう屋で「これ一個もらっていくわ!」っていうときのキメ顔なんかをよく真似していましたね。
(クエンティン・)タランティーノ監督も、極度にデフォルメされた仕草をよく撮る監督ですよね。中でも好きなのが、『デス・プルーフ in グラインドハウス』。「カーアクション、ドカーン!」みたいな、B級感満載のバカバカしい大袈裟さに溢れた映画ですが、CGが増えている現在において、「これが映画だろ!」っていう説得力が感じられるのがまずいいんですよね。キメ顔で印象に残っているのは、後半に女性たちが円卓で無意味な会話を繰り広げる、タランティーノお馴染みのシーン。目がギョロって動いたり、相手を大袈裟に指差したりする仕草がいちいちたまらなくて。そういうシーンを見つけるたび、スマホで画面を録画して、自分の作品に取り入れたりしています。自分の作品では昔の海外のYouTuberのショートコントとかをサンプリングするんですが、タランティーノもこの作品を含めてB級映画をよくサンプリングするので、シンパシーを覚えたりします。おこがましいですが……。
あと、最近だと『RRR』ですよね。英国植民地時代のインドで、ラーマというインド人が英国人にさらわれた少女を救う長い旅に出るって話なんですけど、ベタベタの展開の中でキメ顔や大袈裟な仕草がたくさん描写されていて、本当に最高でした。例えば、少女がいるって情報を手に入れた瞬間、ラーマのドヤ顔にカメラがギュッと寄ってドカンとBGMがかかるシーンとか。眉毛の動かし方ひとつ取ってもずっと気持ちよくて、3時間近くある作品ですが、ずっと脳汁が出続けっぱなしでした(笑)。好きすぎるので、最近よく僕の作品に出演してくれている友人に、「金払うから!」って頼んで劇場に観に行ってもらったんですが、彼はナートゥダンスのシーンで号泣したらしいです(笑)。ナートゥダンスのシーンもいいんですよね。なんの脈絡もなく急に始まって、日常が一変する感じが。YouTubeにその部分がアップされていたので練習しましたが、全然できませんでした(笑)
僕の映像作品には、過激というか、観ている人が心配になるような瞬間が多々あるんですね。だから、安心できるシーンとのバランスが重要だと思っていて。僕にとってはそれが、キメ顔や大袈裟な仕草なんです。その意味でこの3作はすごく参考になるし、『RRR』に関しては「僕のやっていることもめちゃくちゃお金をかけたらこうなるのかな?」と思ったりしました(笑)