カルチャー

黒川想矢は『リリイ・シュシュのすべて』の学校の描かれ方にドキドキした。

今日はこんな映画を観ようかな。vol.21

2026年5月22日

illustration: Dean Aizawa
text: Keisuke Kagiwada

毎週、1人のゲストがオリジナリティ溢れる視点を通して、好きな映画について語り明かす連載企画「今日はこんな映画を観ようかな。」。今回のゲストは、『怪物』や『国宝』といった話題作への出演で注目を集める俳優の黒川想矢さん。紹介してくれたのは、公開から20年以上経った今もなお若者の心を抉り続ける『リリイ・シュシュのすべて』だ。


今日の映画
『リリイ・シュシュのすべて』
(岩井俊二監督、2001年)

「リリイ・シュシュのすべて」Blu-ray
監督:岩井俊二
出演:市原隼人・忍成修吾・蒼井優・伊藤歩
品番:NNB-0003
発売・販売元:ノーマンズ・ノーズ
価格:¥4,180(税込)
©2001 LILY CHOU-CHOU PARTNERS

かつて親友だった星野からイジメを受けるようになった中学2年生の雄一。自ら主宰するカリスマ的歌手リリイ・シュシュのファンサイトでの交流に唯一の安らぎを感じていたが、星野のイジメは日増しにエスカレートし、やがて悲劇的な事件が……。


『リリイ・シュシュのすべて』と出合ったのは、主人公たちの年齢と同じ14歳の時。僕の写真集『コバルト』を撮影してくれたカメラマンの末長真さんと新宿御苑に遊びに行った時、「想矢、これ観てみてよ」ってDVDを手渡してくれたんです。そもそもDVDで映画を観たことがあんまりなかったので、デッキにDVDを入れて映画を観るっていう体験もなんだか新鮮でした。

 観ている間は……ずっとドキドキが止まりませんでしたね。田舎の中学校でいじめられている雄一を中心に、それぞれ問題を抱える中学生たちの過酷な暮らしと、雄一が大好きな歌姫リリイ・シュシュについての物語が描かれるのですが、学校の空気がすごくリアルなんです。同じ制服を着て、同じ時間を過ごしているのに、そこには見えない序列みたいなものがある。僕自身、小学校の頃は友達が全然いなくて、休み時間はずっと理科室でメダカに餌をあげてたんですけど、そういう息苦しさみたいなものが、誇張されるわけではなく、すごく淡々と描かれているというか。そこにすごくドキドキしたんです。

 特に印象に残っているのは、蒼井優さん演じる女の子が、カイトを見つけて空を見上げるシーン。彼女はクラスメイトから援助交際を強要されていて、とても辛い思いをしているんだけど、カイトを見つけたシーンでは笑うんですよ。苦しさや悲しさだけじゃない感情の動きがその表情にはある気がして、忘れられません。

 僕はまだ『リリイ・シュシュのすべて』を1回しか観れてないんですよ。今回のインタビューの前に観返そうかなとも思ったんですけど、どうしても勇気が出なかったんです。映画って、観るのにすごくエネルギーがいるじゃないですか。特に『リリイ・シュシュのすべて』は、自分の中ですごく大切な作品になったから、今観るのは少し怖いんです。

 でも、何回も繰り返し観ることで形が変わっていくようなタイプの作品だと思うから、もう少し大人になったらまた観たいです。その時、今の僕とは感じ方が変わるのか、変わらないのか。もし観直せたら、また話を聞いてください!(笑)

語ってくれた人

黒川想矢は『リリイ・シュシュのすべて』の学校の描かれ方にドキドキした。

黒川想矢

くろかわ・そうや|2009年、埼玉県生まれ。5歳から芸能活動をスタート。2023年公開の映画『怪物』に出演し、注目を集める。その他の出演作に『ARCO/アルコ』『この夏の星を見る』『国宝』『推しの子-The Final Act-』など。出演した最新映画『免許返納⁉』が6月19日より公開。26年11月に主演映画『3ミリの恋』が公開予定。

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