TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】休みの日なにしてる?

執筆:吉住

2026年6月9日

「休みの日なにしてる?」

何してるんだろう?
何してたっけ?
あれ・・・?
わたし、もう35歳になるけど、今まで何してたんだっけ?

気づいたら35歳になっていた。
そんなわけはないんだけど。でも本当にそんな感じ。

お世話になっている先輩の結婚式で馴れ初めVTRを見ていた時もそんな感覚を味わった。
付き合いたての初々しいツーショットからはじまり、部屋で撮ったであろう特別な人にだけ見せる顔。
いろんな場所に旅行にも出かけていた。2人が家族になるまでの軌跡を微笑ましく見守っていたら、突然、【わたしたちはこの4年間で愛を育んできました】

あれ、そうだっけ? 4年も、経ったんだっけ? あの交際報告から4年も、経ってた、、?
わたしはあの日から、何も変わっていないのに。
まだあの日の喫茶店にいて、アメリカンにフーフーと息を吹きかけている。コーヒーなんてもうとっくに冷めているというのに。

そういえば、4年なんてもんじゃない。
わたしは、あの日から何も変わっていない。
わたしには2つ上に兄がいて、彼が中学にあがった頃だと思う。
朝、目が覚めて1階に降りていくと、鏡の前で兄がなにやら熱心に、ネチャネチャしたものを頭に塗りたくっていた。
見慣れない光景に「なんですか、あれは」とつぶやくと、朝食中の父が、ワックスを付けているのだと教えてくれた。どうやら数日前に父にねだったらしい。
「はぁ~、なるほど。色気づいたのですね。いいこといいこと」と兄の成長を喜ばしく思っていると、父は「お兄ちゃんだけに買ってあげるのは違うから」と、寝ぐせ直しウォーターと書かれたスプレーボトルをわたしにプレゼントしてくれた。突然のプレゼントに嬉しく思う反面、さほど興味が持てないのも事実で、お礼もそこそこにテレビで流れる“ちゅらさん”の方に夢中になった。そして、その日は寝癖をつけたまま登校した。次の日も、その次の日も、寝癖はついたままだった。

あれから25年。
わたしは未だに寝癖をつけたまま家を出る。
来なかったのだ、わたしには。寝癖直しウォーターを必要とする日が。
好きな子を意識して少しでも自分を可愛く見せようと色気づく。そんな心の移り変わりがわたしには訪れなかった。
てっきり、時期がくれば女子は全員ヘアアレンジに目覚めるものだとばかり思っていたのに。残念。
(寝癖を直すのは色気というより身だしなみだろ、というのは一旦置いておいて)

自分に色気がつくのを待っていたら、寝癖をつけたまま四半世紀が過ぎていた。

こんな感じで、わたしは大半の人が年齢を重ねる上で経験する通過儀礼のようなものを全く通ってこなかった。

ずっと受け身で生きてきたので、当然っちゃあ当然なんだけど。なんせ、子どもの頃の習い事はお兄ちゃんがやっていたものをパクるという形で追随させてもらったし(野球だけはマネしないでと言われたので何故かサッカーをしていた時期がある)、受験する高校も名前を聞いたことがある高校(つまりは、兄の通っていた高校)だったし、部活だって幼馴染が入るって言うから入ったし、大学時代の美容院は友達が紹介してくれたところに通っていたくらいだから。別に美容院はいいんじゃないのと、侮るなかれ。その美容院は福岡にあって、わたしは熊本の大学だったから、髪を切るためだけにわざわざ福岡・熊本間を往復していた。なぜそんな訳の分からないことをしていたか。それは、自分でホットペッパーで調べるのが手間だったから。これに尽きる。

どうだ。とんでもない人間だろう。自分でもそう思う。
よくここまで生きてこられた、とも思う。
そんな人間がひとりで生きるとどうなるか。
それは、【10年くらい平気で溶かす】だ。

気付いたら、35歳を目前にしていた。
どれだけ腰の重いわたしでも、さすがに焦りを覚え、我が腰を上げざるを得なかった。
ゆっくりと立ち上がり、ようやく自分と向き合ってみたら。
なにも分からなかった。
どんなものが好きで、なにに興味があり、どういうものを大切に思っているか。
なにも知らなかった。
そうか。わたしはずっと、自分に興味がなかったんだ。

だったら、ここから知ろう。自分がどういう人間なのか。そして、人生をちゃんと楽しむんだ。
そう決めたのがここ2年くらいの話。

最近よく明るくなったと言われる。この間は背も大きくなったと言われた。2人に言われた。ぺたんこ靴を履いていたのに。
だけどその代わり、髪からいい匂いがするとは言われなくなった。悲しい。チャームポイントだったのに。
わたしはこの2年でだいぶ変わったみたい。人から見ても分かるくらいに。
あとは、加齢臭もするようになったみたい。さいあく。

とりあえず今は、髪をショートカットにしてみたい。
登山も、社交ダンスも、陶芸も。和食教室にも通いたいし、燻製もやってみたい。
やりたいことが山のようにある。だから今なら答えられる。

「休みの日なにしてる?」
「ん~?旅行!」

まだ自分を知らなかった頃の吉住

プロフィール

吉住

よしずみ|1989年、福岡県生まれ。2015年にデビューし、コンビで活動後、2016年からピン芸人に。2020年12月、「女芸人No.1決定戦 THE W」優勝。「R-1グランプリ」では2021年、2022年、2024年、2025年に決勝進出。現在、「THE突破ファイル」「ウェル美とネス子。」(ともに日本テレビ)、「吉住の聞かん坊な煩悩ガール」(GERA放送局)、「ウエストランド井口と吉住の孤独アジト」(番組公式YouTube/テレ朝Podcast)、「REQ JAM」月曜レギュラー(JFN系)などに出演中。

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