TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#1】雑誌とはなにか?
執筆:アッシャー・ペン(Sex Magazine)
2026年8月13日
こういう問いは、Sex MagazineのブログでLolaがよく投げかけている。僕がいちばん好きじゃない答えは、若い人たちの、気の利いた、短くて、正しくて、それ以上でもそれ以下でもないことを言うやつだ。逆にいちばん好きなのは、年配のおじさんたちが延々と脱線しながら語り始めるやつ。だから僕もここでは、そういうふうにやってみようと思う。
昔、雑誌というのは、編集部という場所で作られ、印刷され、配送され、買われ、読まれるものだった。広告がたくさん載っていて、その写真や記事はそこでしか見られなかった。ものすごく遠くて手の届かない世界とつながるために手に取る存在だったのだ。高校生だった頃、カナダの図書館でFiona Appleが表紙の『Spin』を見つけた。あとになって、その写真を撮ったのがTerry Richardsonだったと知るのだが、裏表紙にはSean Landersのコミックが載っていて、クールな写真やアルバムレビューや広告を眺めているだけで、本当にいい気分になれたことをよく覚えている。
その後、美術大学に入ると、図書館で『Index』のバックナンバーを読み漁った。今でも僕にとって史上最高の雑誌だ。『Vice』は好きだったことはないのだが、仮に好きだったとしても誰にも言わなかったんじゃないかと思う。
バンクーバーのある書店の最上階には、世界中の雑誌がずらりと並んでいて、Larry Clarkの映画に出てきそうな若者たちが表紙を飾った『The Face』の号もあった。当時は高すぎるし、なくてもいいと思っていたが、今になって思えば全部買っておくか、いっそ盗んでおけばよかった、なんて思う。今では一冊何百ドルもの値が付いたものがeBayに並んでいるが、もし持っていたとしてもその値段では売らないだろう。
実は僕は19歳のとき、『Index』でインターンをしていたことがあるのだが、当時は何をしていいのかまったくわからなかった。初めてのニューヨークで、届け物を頼まれて外に出ても、その途中でSoHoをぶらぶら歩き回り、何時間も無駄にしてしまうようなやつだったのだ。驚くべきことに、僕以上に使えないインターンがいたこともあり、その人はクビになっていた。結局、編集部で働く方法も、雑誌を立ち上げる方法も、運営する方法も、その一員になる方法も、「雑誌の作り方」についてなにひとつ学ぶことなく期間を終えた。まさにその渦中にいたはずなのに、知りたいと願うものがとにかく途方もなく遠いものに感じられた。
そのあと、雑誌のこと忘れる期間がしばらく続く。アートの世界に夢中になり、その次はインターネットの虜になっていたのだ。けれど、2010年頃になって、ふと雑誌が次々と休刊していることに気づく。それと同時に、「もう何年も、本当にいい映画がないな」とも思った。そこで初めて、「ちゃんと機能する何か」を作りたいと思った。が、いろんな意味で遅すぎたのだ。Tumblrはどんなウェブサイトより面白かったし、まして紙の雑誌なんて相手にならない。自分で編集できて、速くて、予測不能で、熱量がある。一出版物が、それに勝てるわけがない。Instagramも同じだ。どれだけひどくて、憂鬱で、人の魂を吸い取るようなSNSだったとしても、かつて雑誌が僕らを満たしていた欲求を埋める役割を果たしていた。その関係性が元に戻るということは特になかったが、それでもそのタイミングで自分の雑誌を始めようと思ったのだから、笑ってしまう。我ながら健気というか、なんというか。
じゃあ、雑誌とは一体何なんだろう。僕はその答えをまだ知らない。アートを作りたいわけでもなく、文章だけを書きたいわけでもなく、写真だけを撮りたいわけでもない。でも、その全部に関わる何かをやりたい。雑誌というのは、そういう人が作るものなんじゃないかと思う。今こういうことをしたいって人は、かなり稀なのではないだろうか。『Interview』は素晴らしい雑誌だ。Richard Turleyが関わるものは、どんなものにも大抵心を動かされている気がする。
『Cosmopolitan』がRichard Kernに表紙を撮らせて、ドラッグストアで買えるようにしているのもよかった。でも印刷は悪い意味でチープだし、レイアウトも退屈。Facebook Marketplaceで「magazines」と検索すると、2004年から2010年頃までの『Nylon』が山積みで売られていたりする。そのうちの一冊はCory Kennedyが表紙だった。あれは手に入れなきゃ。
プロフィール
Asher Penn
アッシャー・ペン|アーティスト、映像作家、編集者。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで写真を学んだ後、ストーニーブルック大学で映画の修士号(MFA)を取得。2012年、オンラインメディア「Sex Magazine」を創刊。ニューヨークを拠点に、アーティストやデザイナー、写真家、音楽家など、ポストインターネット時代を彩る多様なクリエイターへのインタビューを通じて、アートやライフスタイルへの独自の価値観を伝える。2020年からはプリント版もスタート。最新号はIssue #16。
Instagram
https://www.instagram.com/ashermixtapehell/
Official Website
https://www.asherpenn.com/
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