From Editors

都市の観察者で、革命家で、パンツのシルエットが変わらない人。

NO.951

2026年6月8日

シティボーイってどういう服を着ているのか。これまでさんざん考えたり、ページを作ったりしてきたはずなのに、あらためて問われると、まあやっぱり難しい。実際、誰かに聞かれたわけじゃないですが、50周年を記念した特集でFASHIONというカテゴリーを作っていくということは、そんな問いを抱え続けるようでもありました。

もちろんイメージは思い浮かびます。シャツが好きで(特にコットンのオックスフォードとか)、ジーンズやチノパンをよくはいて(洗いざらしの生地が詰まった感じ)、ずっと変わらないお気に入りのスニーカーがある(街を歩き回るから)。それに秋にはいくつかのセーターを着て(毛玉は少しついているかも)、冬はやっぱりダウンベスト?(なにしろ日本で初めて着たのは、やがて『ポパイ』を創刊する先輩たちだ) そして間違いなく清潔感がある。シャツの襟の裏もスニーカーもきっとキレイで、とか。

ただしそんな茫洋としたイメージだけではページにはならなくて。この特集が始まった当初は、とにかくバックナンバーを読み漁りました。なにしろ50年間ですから、たくさんのヒントや発見があります。創刊3号目の「WILD CHIC」の「勇気ある実験」がぜんぜん古びて見えないこととか。19号目の「スウィンギン★ロンドン」企画では『セディショナリーズ』でレジを打つヴィヴィアン(・ウェストウッド)がいたりとか(とてもキュート)。

『ポパイ』の初代ファッションディレクター、北村勝彦さんが手がけた「WILD-CHIC」は、創刊3号目のファッション特集。「これはまだ誰もやっていないのだぞ」というコピーのとおり、当時のシティボーイには革命的な衝撃だったそう。

19号目の「スウィンギン★ロンドン」特集は『セディショナリーズ』も紹介。右下がヴィヴィアン。

すごいなー。面白いなー。なんて読み続けては、資料用にiPhoneでキャプチャして。あっとういう間に時間は過ぎていきます。当然、シティボーイってどんな服を着ているか、という問いはまとまることもないまま、資料の画像が溜まり続け、カリフォルニアの青空みたいにむしろイメージは広がっていくばかり。雑誌って怖い。

そんな中で救いになったのは、大先輩たちの言葉でした。創刊50周年を記念したPOPEYE WEBの「50×50 INTERVIEWS」(こちらも公開が始まっています。ぜひ)は、50年間の『ポパイ』と関係の深い先輩たちへのインタビューを行う特別企画。そこで聞くことができたんです。例えばこのような。

「シティボーイって都市の観察者だから、その時代のその街に溶け込む服を着るんだと思う」
「『ポパイ』は革命でした。がんじがらめのルールを自由に着崩す喜びを知りました」
「パンツのシルエットがコロコロ変わる男は信用できないね(笑)」

1つ目が〈MOUNTAIN RESEARCH〉の小林節正さん、2つ目が編集者で『Them magazine』編集長の右近亨さん、3つ目がスタイリストの山本康一郎さんの言葉です。その詳細について、ここでご紹介するには時間もスペースも足らないので、これから公開されていくインタビューを楽しみにしていてほしいのですが、こういった言葉によって輪郭が結ばれていくようでした。

都市の観察者で、革命家で、パンツのシルエットが変わらない人。
街に溶け込んで、ルールに囚われない自由さがあって、しかも大事なところは一貫している。具体的に何を着ているかは、やっぱりぼんやりとしますが、なんだかすごくカッコいい。シティボーイにとってのファッションとは、そういうものなのかもしれません。

(本誌担当編集)田口悟史