ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.43

社本真里の隔週日記: 引っ越し

2023年12月5日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 私はついに引っ越しをした。二拠点の生活から街の生活になった。24歳の時に檜原へ引っ越してから、7年が経つ。もともと小屋は隣に住むご家族の土地に建てさせてもらうかたちで話をしていたのだが、上物(小屋)と土地の持ち主が別々だとのちに面倒になるかもしれない、それに私がまだ若かったこともあってこの先何があるか分からない。で、あればうちで建てるよ! と隣に住むご家族からの提案があった。

 当時まったく資金もなく、ただ勢いだけの私にとってはとてもありがたかく、その場でお願いしますということになった。小屋の設計、細かい意匠的な部分も全部やりたいようにやらせてもらい、私はこの約5年、家賃(とても安い)を払いながら小屋に住わせてもらった。本当に感謝しかない。

隣町のスーパーからダンボールを集めて、少しずつ梱包して少しずつアパートに運んだ。

 パートナーと暮らすことを考えたとき、二拠点という選択は、私が小屋から引っ越す為の準備期間みたいなもので、いきなりはとてもじゃないけど考えられなかった。小屋がまさか自分の小屋じゃなくなる日がくるなんて考えてもなかったし、小屋に暮らしていないことを私自身が受け入れられるのか不安しかなかった。ただ二拠点であることで、集落での生活に責任がもてないことの申し訳なさも同時に膨らんでいき、二拠点の1年間、たくさんもがいて、なんとか市民となったのだ。

 集落、あの小屋に暮らしていたことに誇りと敬意があったから。引っ越すことが辛かった。でも同時に引っ越しか出来たことで、何か新しい面白い出来事が今後あるんじゃないかと、うずうずした気持ちにも出会えた。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。