ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.37

社本真里の隔週日記: おとなりさん

2023年7月27日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 7月頭、集落の近所に住むおじいさんちの梅を少し取らせてもらい、梅酒と梅シロップを仕込んだ。 その少し前から(街の方が気温が高いので、熟すのが早い)街のアパートの近所にも梅の木があって、その家の前を通る度に梅の様子をうかがっていたが、熟して道に実が落ちても収穫する様子はなかった。代わりに取りましょうかとインターホンを押すかすごく悩んだけど、怪しい人だと思われてしまうかなとか色々考えてしまい勇気が出なかった。

梅の木のあるおじいさんちは、私の小屋よりさらに50mくらい標高が高い所にあるので10分程歩いてい く。収穫後の帰り道、パートナーと近所に住む女の子が楽しそうに話をしながら帰っていた。
次の日に仕込んだ梅酒。いつもみりんで仕込む。梅シロップはお酢をたくさん入れるのが好きだ。

 垣根がなく毎日のように顔を合わせる集落での暮らしとは違い、アパート暮らしのご近所付き合いはとてもあっさりとしている。ご近所付き合いで面倒なことは何一つとしてない。というより顔を合わせる機会がほとんどない。

 私たちの住むアパートは3階建てで、部屋は1階。1階に4戸あるうちの一番奥の部屋を借りている。 おとなりさんは、一人暮らしのおばあちゃん。廊下を通る度にいつも煮物のいい匂いがしている。 挨拶に行ったときに、はじめは不審な顔を浮かべていたけど「夜中に何度も起きるからうるさかったらごめんね」と話してくれた。 そのおばあちゃんの隣は小学生と高校生のお子さんが2人いる4人家族で、そのまた隣は大工さんだ。 私たちが挨拶に行った日は、ご家族のうちお父さんしかいなかったこともあって、翌日お母さんがわざわざ私たちの部屋まで挨拶に来てくれて「困ったことがあったらいつでも声かけてと」言ってくれてとてもほっとした。

 先日パートナーの実家から送られてきたサクランボが2人では美味しいうちに食べきれないね、という話になり、せっかくだからおとなりさんにお裾分けしようかと、とても悩んだが、これまた勇気が出なかった。(結局近くに住む友人が取りに来てくれた)

 やっぱりお裾分けしたらよかったかもとその後になってとても後悔した。いつか、隣のおばあちゃんの煮物を食べたいし、いつかご家族と夕食を共にしたいので、次のタイミングを見計らっている。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。