ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.34

社本真里の隔週日記: 半分、街に住む1

2023年6月15日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 家の脇の紅葉の木が昨年より確実に大きくなっている。葉が洗濯物に当たるようになってきて、家の中にいるとより木々に囲まれている感覚が強くなった。

梅雨の合間の晴れ間。太陽の光が綺麗にぬけて気持ちがいい。

 私は山の上の小屋に住んでいるが、数ヶ月前から街のアパートにも住むようになった。パートナーの仕事場が渋谷区、私の仕事場が檜原村なので、数年それぞれの家を行き来していたけど、そろそろふたりの拠点をつくろうという話になったからだ。わたしたちは互いの仕事や暮らしを尊重する中で、悩んだ結果、二拠点という選択をした。

 パートナーの住所は新しい拠点である街に、私の住所は檜原村に残した。私は特に曜日とかは決めずに、仕事の都合によって週の2~3日を檜原村で過ごしている。職場へは車で1時間半くらい。檜原村へ向かうとき、いつも大岳山(檜原村にある標高1200mの山)のシルエットを探す。象が寝てるみたいだと、集落に住む男の子が話してくれた時からもう象に見えないので、それに向かって車を走らせていると、檜原村に着く。

大岳山。象が左に鼻をのばしてうつ伏せで寝ているように見える。

 最近、実は街にも住み始めたんです、と周りに話をすると、新しい拠点が23区外の多摩地域なので、それは街なの? と何人かに笑われた。もちろん水が出ない日はないし、「ふろ自動」というボタンを押せばお湯が沸く。土を踏まなくても生活ができるので、キャンバス地の白いスニーカーを履く機会も増えた。街路樹と公園や大学の敷地内にある木々が街にとっての緑なんだと改めて感じた。交通手段も車より自転車の方が便が良さそうだったので、新しくクロスバイクを買った。休日は20分くらい歩いたらモーニング(愛知県の喫茶店文化)が食べられる店があるし、家族連れで賑わう銭湯もあってよく行くようになった。最近は市民プールにも通い始めている。街に住んでるなーわたし、と思いながら、少しずつ楽しみを見つけているような日々だ。

 まだ山と街の行ったり来たりは慣れない部分もある。朝起きると今日どっちにいるのか分からない日もある。きっとこのどっち付かずの生活は長くは続かないだろうとも思っている。だけど今、半分街に暮らすことで自分が感じた新しい視点や、時には違和感をしっかり受け止めていきたい。そのことをいつものコタツでジローさんヨシコさんとあーだこーだと話がしたい。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。