ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.24

社本真里の隔週日記: スギの葉を売る

2023年1月11日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 ジローさんと山を歩けば、道端に咲いている山野草や山の話を聞く。手入れが行き届いていないという針葉樹(スギ・ヒノキの人工林)の山は、暗く、倒木も各所にあるが、山には独特の静けさと凛とした佇まいがあってかっこいい。

 引っ越して間もない頃は、どこかに勤めて働くということはしていなくて、前職の建築事務所との仕事を少しずつやりながら過ごしていた。自分がここでできることはなんだろうということを漠然と考えていた時期でもあって、たまたま都内で開催されるマルシェに村の有志のメンバーで出店するという話を聞いたので、自分にも何か出せるものがないか考えたとき、あ、そうだスギの葉があると思った。

マルシェに持っていった草木。「この草木の緑色は、どのくらい保つの?」とお客さんに聞かれて、初めは知識がなく答えられなかった。

 他にも庭の南天や、月桂樹の枝をたくさん用意した。その時ジローさんからは「そんなの絶対に売れっこないよ」と言われたけど山の素材は、街では意外と需要があった。今でもジローさんはまさかスギの葉が売れるなんて思わなかったと笑い話にしている。

 それから村内外のデザイン周りのお手伝いをしたり、村のレストランを間借りしてスープとパンを出す食堂をやったり、焼き菓子やお弁当を作ってみたりしながら、何ができるのか、を模索する数年があった。

 そんな中でデザイン周りのお手伝いをしていた村内の林業会社から、山の素材の販売を一緒にやらないかというお誘いを受けたのが、今から3年前くらいのこと。

当時友人と旅行へ行く際、ふざけた旅のしおりを作っていた。
それをたまたま現職の林業会社の広報担当者が見て、会社の広報物つくることを一緒にできないかと相談されたのが始まりだった。
都内オフィスのディスプレイとして納品前のスギの幹先部分。

 山で収穫した木々を葉先から根っこまでどう活かし、届けるのかということをお客さんと考えて伴走する仕事だ。マルシェでスギの葉を売ろうと思ったあの頃には全く想像も出来ていなかったが、私は結局今もスギの葉を売っているんだ、とこの記事を書いていて気付いてしまった。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。