ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.16

社本真里の隔週日記: 垣根がない

2022年9月11日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 村の暮らしにはなんだか垣根がない。いわゆる垣根という家の境界線はなく、小道や、階段で隣の家につながっている。

家から家につながる小道。
昔は子供たちが学校からこの道を通って帰宅していたそう。近道だったらしい。

 なので、各家の庭はみんなの通り道になっていたり、坂道の途中にある家は、車がすれ違う為の待機場になることもある。

 子供たちも、集落全体が遊びのフィールドで、各家々の庭をまたいで自転車に乗っていたり、わたしの小屋の周りも仕事から帰ってくると、子供達が遊んだ痕跡があったり。

毎日集落を駆けずり回って遊ぶ子供たち。

 もちろん各家々でプライベートはしっかりある。その上で、お互いの生活が少しずつお隣さんと重なっているような…。わたし自身も、小屋は室内7.5畳しかないけれど、ものすごい大きな庭が付いてる、そんな感覚でいる。

 家族単位ではなくて、集落単位で色々なものやことを共有している暮らしが昔から残っているからなのかなーと思う。きっと、その方が合理的だったから。今も、水の管理を集落で行なっていたり、雪が降れば皆で雪かきをしたり、どこかの家が火事になれば一番に地元の消防団が助けにきてくれたり…。

「みんなが遊んでるところを描いてあげる」と、ひとりの女の子が絵をくれた。
自治会館の前の庭でサッカーをしているところ、とのこと。

 皆がいないと自分がここで生きていけないとつくづく思うので、そんな関係性が、垣根がない風景をつくっているのかもしれない。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり |  1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。