7/19(日)に渋谷・WOMBで行われた、JUMADIBA待望の1stアルバム『Kibarashi』のリスニングパーティをレポート。JUMADIBAがコラボレーションしてきたアーティストが一同に集結した今回のパーティは、日本のオルタナティブ・ラップシーンの未来を映す場でもあった。
2026年8月2日
JUMADIBAのシーンが”点”から”面”へ
7/19(日)に渋谷・WOMBで、URBAN ARCHIVE第一回でフィーチャーしたJUMADIBAの1stアルバム『Kibarashi』のリスニングパーティが行われた。東京都杉並区出身のJUMADIBAは、ヒップホップの固定観念に囚われず、UKロックやサッカーなど多様なカルチャーを参照しながら、音楽や映像、ライブパフォーマンスまで、唯一無二のエステティック(美学)を確立しているアーティストだ。『Kibarashi』は、現在のオルタナティブなラップシーンを牽引する彼にとって初めてアルバムという形でパーケージングされた作品ではあるものの、彼がライブMCで語ったのは、独立した作品という位置付けではなく、彼がこれまで手掛けてきたEPやシングル、映像といった表現活動と地続きにある作品であるということだ。
今回の『Kibarashi』のリスニングパーティには、JUMADIBAが初期から現在に至るまでコラボレーションを行ってきた多様なアーティストたちが集結し、『Kibarashi』に至るまでの初期からの彼の活動の連続性が表現されると共に、パーティを通じてこれまでのコラボレーション相手の点と点が繋がることで、彼が作り上げきたオルタナティブなシーンが一つの”面”として表現されていた。
具体的には、作品を通じてコラボレーションしてきたCampanellaやLil Soft Tennis、ziproomといった面々から、JUMADIBAのパーティを支えてきた、WASPのGen YamadaやSOTA、NAMUのGeorge Boltonがパーティに出演。彼らは、JUMADIBAが制作の拠点とするスタジオをシェアしており、ファッションブランド〈SOL soonerorlater〉のディレクターとしての顔を持つSOTAがマーチを手掛け、Gen YamadaやGeorge Boltonが、楽曲のプロデュースを行うなど、彼のクリエイティブを支えているのも特徴だ。今回のパーティでもサブフロアとなる4Fは、NAMUがオーガナイズした。
”Underated”で、”Upcoming”な面々が集う
今回のリスニングパーティに集まった面々に共通する特徴としてJUMADIBAが話していたのが、彼らが”Underated”(過小評価)で、”Upcoming”(これからブレイクする)なアーティストであるということだ。そんなUnderratedなアーティストとして、真っ先に名前を挙げざるを得ないのが、Only Uだろう。この日のステージも素晴らしかったが、最後に披露した「Chrome Hearts」は、現行の国内ラップシーンにおいて最もUnderratedな曲だと思う。JUMADIBAも参加しているこの曲をぜひ聞いてみてほしい。
渋谷出身のS TILL I DIEも間違いなくUnderatedなアーティストのひとり。今年1月にリリースした最新作『Tokyo is Yours』は、JUMADIBAも参加している完成度の高いアルバムだが、先月には、Benjazzyを客演に迎えた「I got something to say」をリリースしたことでも話題を集めている。彼のホームである、渋谷のWOMBで行われたこの日のパフォーマンスは、彼の卓越したラップスキルの高さもさることながら、リリックから紡がれるダークな世界観で会場を彼の色に染め上げていた。この日のステージには、彼が率いる渋谷区を拠点とするクルー・BSTAのメンバー、JIROもサプライズで登場。圧倒的な爆発力でステージを動き周り、フロアにエネルギーを注ぎこんでいた。
”Upcoming”なアーティストとしては、Lil Mafuyu & GYW BAY DAGR、SpiderWebのステージが印象に残った。Lil MafuyuとGYW BAY DAGRは、JUMADIBAのバックDJや楽曲のプロデュースを担うGen Yamadaの初のEP『i met BAY and Mafuyu』と、続く『i met BAY and Mafuyu 2』に参加しており、全曲の作詞を担っている。異なるラップのスタイルを持つ二人だが、彼らは、卓越したリリックのセンスを持ちながらも、ラップ自体が楽曲のサウンドとして成立するようなオリジナリティ溢れる声の質感とリズムを持っているという点で共通している。特に、「i love tokyo feat. GYW BAY DAGR & Lil Mafuyu」は、彼らの情緒感と独特の温もりがある声質が、Gen Yamadaのセンチメンタルなサウンドと完璧にフィットしており、踊れるが同時に淡い寂しさを感じさせられるようなマジックを持っている。Gen Yamadaもまた、現在のラップ/ダンスミュージックシーンにおいてUnderatedなプロデューサーの一人だ。
その後、登場したSpiderWebは、ラッパーのKEWSER、Harmm、CheGhoと、DJのYena、スタイリストのYoheiHakozakiの5名からなる足立区を拠点とするクルーだ。特に、ウイグル出身のKEWSERは、楽曲プロデュースからリリックまで手掛けるSpiderWebのブレーン。この日は、KEWSER、Harmm、CheGhoがステージからではなく客席から登場して観客の輪に加わったことで、彼らを中心にフロアに熱狂の渦を巻き起こしていた。3人のメンバーが舞台に上がると、同じく足立区出身のラッパーである、Nyture、Lil Mafuyu、DJのnasthug、そしてSpiderWebと共演してきたラッパーのGYW BAY DAGRが登場。足立区のシーンを担う面々が一堂に会し、ステージは大団円を迎えた。NytureやSpiderWeb、Lil Mafuyuは、北千住のJuice Bar Rocket Kitasenjuを拠点に、パーティ「4SOME」をオーガナイズしている。イベントは今年、渋谷・Enterでも開催されるなど、足立区から徐々にその影響力を拡大しており、現在進行形で勢いのあるシーンを作り上げている点で注目を集めている。
続く、ziproomとLIL SOFT TENNISは、異なるオルタナティブ性を持つアーティストだが、それぞれが貫禄を見せつけるステージを披露。「Dive」のヒットにより、ラップシーンでは既に広く名前が知られている存在となったziproomは、UKミュージックの影響を感じさせるアーティストで、JUMADIBAと共にオルタナティブシーンを牽引していくことが期待される二人組だ。彼らは新EP『NEW GAME』のリリースを控えており、8/9(日)には、CIRCUS TOKYOで、リリースパーティが予定されている。
LIL SOFT TENNISは、JUMADIBAと初期からコラボレーションを行うアーティスト。JUMDIBAとは異なる音楽性を持つ彼だが、彼が加わることで、JUMDIBAがクロスオーバーするシーンの多様さをより立体的に感じることができた。ちなみに、大阪の彼が東京へ来る時は、JUMADIBAの家に泊まっていた滞在していたことをライブの合間にLIL SOFT TENNISが教えてくれた。
『Kibarashi』の熱狂
SotaのDJを挟んで、ついに主役のJUMADIBAが登場。新曲「Meditate」で会場のトーンをJUMADIBA色に統一すると、アルバムのタイトル曲である「Kibarashi」を披露。「Kibarashi」は、彼らしい心地よい抜け感のあるラップと跳躍感のあるビートが完璧に組み合わさり、自然と体が動いてしまう曲。この日は、同曲が連続で披露されたが、2回目がかかった時には、吸い込まれるように小さなサークルの渦がフロアの各所で生まれていた。無意識に踊ってしまう動きの延長線に、踊りの渦が生まれ、結果としてモッシュとなっていく流れは、JUMADIBAならではの身体性だ。
続いては、2022年にSoundcloud上にアップされた「Scuba」が、「Scuba Pt.2」として披露。予想外のサプライズがファンを盛り上げた。そこから、アルバムに先立ってリリースされていた「ジョガボニート」と「Fuck」がかかると、フロアが一気に爆発。5月と6月にリリースされたばかりの2曲が、既にフロアに火をつけるバンガーとなっている様子には驚かされた。この2曲のアートワークは、「ジョガボニート」 を菊池虎十が、「Fuck」をGILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEが手掛けるなど、同世代の気鋭のアーティストとのコラボレーションが生まれていることもポイントだ。ジャンルやアートフォームを超えて、有機的なコミュニティを形成していることもJUMADIBAのアーティストとしての魅力や面白さだろう。その後の「Ame」では、照明のレーザーが縦横に交差する幻想的な空間を作り出し、ステージ演出でも魅せていた。続く「K Honda in Moscow」は、サッカー選手の本田圭佑がかつてロシアのCSKAモスクワに所属していた頃を歌った曲だが、同じくサッカーを引用した、アップテンポな「ジョガボニート」とは対照的に、本田がロシアにいた2010年代前半に対するノスタルジーと同時に、その頃から現在にかけて起こりえたあり得たはずの様々な未来について思いを馳せさせるような曲として印象的だった。
JUMADIBAがシーンを牽引する
「Touge」、「休息日」、「Metro」とメロウな3曲が続いた後、JUMADIBAがMCで語ったのは、東京という都市への思いだった。
「世界のいろんなところに行ったけど、東京ってかなり面白いと思う。今日出てくれたみんなもそうだけど、(オーディエンスの)みんなも自分なりの面白さを、東京って場所で見つけていってほしい」
MCを終えると、再び「Fuck」を披露。この曲で再度火がついたオーディエンスによるモッシュが爆発的に起こり、最後は「やってくだけ」でクロージング。最後のMCから「やってくだけ」で締めくくるまでの流れは、ラップに留まらない東京のシーン、都市文化を牽引するJUMADIBAのこれからの決意と覚悟のようなものを感じられる瞬間だった。
本来、「やってくだけ」で終えるはずだったと彼が振り返る今日のショーだったが、オーディエンスからの鳴り止まない「アンコール」に応える形で、JUMADIBAがカムバック。一撃必殺の「Assaji」でフロアを熱狂に包み込むと、最後に、「Mae Ni 行こう Mae Ni 後ろじゃなくMae Ni 行こう Mae Ni」のアイコニックな歌詞で知られる、名曲「Mae Ni」でこの日を終えた。
初のアルバム『Kibarashi』では、全曲のプロデュースをJUMADIBA自身が手掛けている。アルバムは、フロアキラーの「Fuck」や「ジョカボニート」から、より内省的な「Touge」まで、彼ならではの多彩な表現が詰み込まれた高い完成度を誇る作品となっている。
現在、成長著しい日本のラップシーンだが、その規模感が拡大するにつれ、アーティストの人気確立や楽曲のヒットもある種のパターン化も同時に進行している。固定化された型にハマらないサウンドやオルタナティブ表現がTohji以降、見えにくくなっている状況が続いているが、紋切り型のヒップホップ表現から外れて正直な美学を追求するアーティストが集まったこの日のリスニングパーティは、日本のラップミュージックの未来に対して希望を強く感じられる場だった。
そして、JUMADIBAの『Kibarashi』は、彼がオルタナティブシーンを牽引していく上で核となる強い引力を持った作品に間違いなくなる。Tohjiがショッピングモールをはじめとした郊外の原風景を描いたのに対して、JUMADIBAは、都市における情緒的な景色を紡ぐ。それは、煌びやかで、密でありながら、同時に匿名性を得られる都市のありようだ。喧騒と共に、都市には一人で過ごすための静寂と気晴らしの場所がある。『Kibarashi』が描いていたのは、JUMADIBAにとっての都市の正直な景色だった。待望の1st アルバム『Kibarashi』は9月前半のリリースを予定しているという。
プロフィール

JUMADIBA
ジュマディバ|ラッパー。東京都出身。2021年6月に1st Mixtape 『Kusabi』をリリースし、シーンで頭角を現す。2023年には、自らビートメイクも手掛けた2nd Mixtape 『nobori – 上り』を発表し、渋谷・WWWで開催されたワンマンライブは即完売。若手アーティストとして大きな注目を集めた。2025年には3rd Mixtape 『IEGUMO』をリリースし、作品の世界観を立体的に拡張する全国12都市ツアーを成功させた。ツアーファイナルとなった渋谷Spotify O-EAST公演も大盛況のうちに幕を閉じている。ヒップホップを軸に、UKロックやフットボールカルチャーを通過した独自の音楽性を持ち、楽曲制作から映像ディレクションまで、表現のフォーマットを限定しない。言葉の先に情景が広がるようなリリシズムと、等身大の生活感覚で、東京から独自の表現を発信し続けている。
Kei Harada
東京都出身。慶應義塾大学卒業後、黒鳥社へ入社し、書籍の編集などを手掛ける。4年間のヨーロッパ滞在を経て帰国後は、東京を中心に、場所やメディアを横断しながら都市文化に関わる様々なプロジェクトを手掛けている。
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