Kei Haradaが、コロナ以降の都市文化を形作るアーティストやクリエイターたちをアーカイブする、本誌にて連載中の「Urban Archive」。第二回ではアーティストのGILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEをフィーチャーし、美術の枠組みを超えた想像力と実践で、東京の都市文化を更新する彼に迫る。彼が運営するギャラリー・CON_で行われた撮影には、山中雪乃や横手太紀、Taroなど彼と親交の深い面々が集まってくれた。
2026年7月21日
Instagram・コロナ以降の新たな感性と想像力で東京の都市文化に新たな潮流を生み出しているのが、アーティストのGILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(以下:ギロチン)だ。彼の世代に共通する感覚と特徴について、ギロチンは以下のように語る。
「美術の世界で、僕より上の世代は、言論が強いのが特徴だと感じていました。コンセプチュアルアートについて、Twitter(現:X)でバーッとやり取りしたり、配信でトークをしたりと、そういった動きが盛り上がっていて言葉が強かった。僕らの世代は、よりInstagramのようなプラットフォームに影響を受けているから、言葉よりも視覚的な感覚の方が上にあるイメージです。コンセプトを知らない人に対してもビジュアルだけで伝えられるかということも重要だと意識しているというか。だけど、下の世代と違うのは、全員が幼少期からiPhoneを持っていたわけではないので、土臭いような外遊びも同時に経験してきていて、フィジカルな感覚も残っている。いい意味でも悪い意味でも汗が残っている感じです」
「一人で作るか、誰かと作るとしても受発注的なやり方が多い」と彼が語る美術の世界の中で、彼は音楽やファッションといった多様な領域の作り手と関わりながら、美術の枠組みをこえて新たなシーンを生み出している。ギロチンが主宰するプロジェクト「獸」は、その象徴だ。
「獸」は、現代美術の展覧会とライブを組み合わせた形式で毎年開催されており、全7章の物語が7年にわたって展開される。昨年の第3章では、会場の北の丸公園第一駐車場に約6万本のススキと全長15メートルの人工の川と土手による壮大なインスタレーション空間を出現させたことでも大きな話題を呼んだが、その圧倒的なスケール感に加えて、プロジェクトに関わる作り手の数の多さと表現の越境性・多様性も「獸」の特徴の一つだ。
プロジェクトのコアメンバーは、ギロチンと共にギャラリー・CON_のディレクターを務める加藤久智、グラフィックデザイナーの八木幣二郎、映像作家のTaroで構成される。中でも力を入れているという映像は、彼自身の体験や物語、実際の事件をもとに、監督・脚本を務めるTaroがシナリオを考え、完成させている。第3章のススキと人工の川によるインスタレーションは、庭師の野村純平の協力のもと生み出され、ライブには、Tohjiやカネコアヤノ、Jumadibaらが出演。他にも、ファッションデザイナーのGitiが衣装を手掛け、アーティストの横手太紀らが作品の展示を行うなど、多くの表現者と共にプロジェクトを作り上げている。
会場の設営でも、プロのインストーラーだけでなく、彼の友人を中心に様々な人々を巻き込んで場を作り上げているように、「獸」には、展示やパフォーマンス以外にも多様な関わり手と参加のためのプロセスが存在する。結果として「獸」には熱量のあるコミュニティが有機的に生み出されており、そのコミュニティが原動力となることで、それぞれの瞬間において他のアートイベントや展示では見られない圧倒的な爆発力が作り出されている。その熱量の作り方は「汗が残っている世代」と自らを語るギロチンならではのアプローチなのかもしれない。
「いろんな人が参加すると、何かいいことがあると思うんです。例えば、作り手として巻き込んだ)友達が客としてもその場にいて、彼らがコアに盛り上がることで、イベント自体の雰囲気がガッと盛り上がることが多くて」
彼がプロジェクトの中で瞬間的な爆発力を生み出そうとする姿勢は、「衝撃的だった」と振り返る、ロックバンド・GEZANによる2019年の「全感覚祭」をはじめとする音楽ライブやクラブイベントでの自身の原体験が関係している。
「これまでそういう瞬間をたくさん体験してきたからこそ、自分のイベントでも起こしたい。そういうことなのかなと思います。色んな要素を設置していくことで、ヤバい瞬間が起こる確率を上げていく。そのことに自分は興味があるのかもしれないと思うんです」
コロナ下に大学時代を過ごした彼は、パンデミックの影響を色濃く受けた世代だが、ポジティブな影響も同時に多くあったと振り返る。むしろコロナ禍で、フィジカルな場を介して繋がる友達の数が増えたと振り返る。
「あの時、ピクニックをよくしてて(笑)外に出てはいけない空気の中で、それでも遊びに来るような人たちと集まると、早く仲良くなれるんです。一緒に門を越えてきているっていう感じがあるので」
こうして生まれたコロナ禍に出来た友達との関係性は、ホワイトキューブなどの固定化された美術の展示のあり方とは異なる枠組みを形式を模索する「獸」に対する想像力にも繋がっていったという。
「コロナ下に、いろんな大学やジャンルの人たちと混ざり合えたからこそ、「獸」をできるなと思えるようになったんです。もし周りにそういう友達がいなかったら、できるかどうかを想像するところまで達していなかったと思います。そして、今度は「獸」をやっていくと、照明や音響の人が必要になったりして、色々な関わり方がさらに増えていく。そういうことが同時進行で起きている感じです」
『AKIRA』や『鉄コン筋クリート』、ヴァージル・アブローやYeといった社会現象を巻き起こした音楽やサブカルチャーからも強い影響を受ける彼にとって、「獸」をはじめとした新たな表現形式やシーン作りへの挑戦の先には、美術の枠組みを超えて人々と都市を巻き込んだムーブメントがある。
「一人だけで頑張ってもあまり意味がないという感覚なんです。自分が作り出したいのは文化運動で、一人で美術作品を作り続けていても”運動”にはならない。個人の中にしか溜まっていくものがないので。全体として発達していくことで、文化的な運動になっていくと思うし、お互いにアウトプットが違っても共有できるものがあれば、影響し合って、ノリみたいなものが生まれてくる。それが文化運動だと思うし、自分はそういうものをやっていきたいです」
最後に、ギロチンは、彼が見据えるムーブメントを担う覚悟と責任についても語ってくれた。
「今はまだ、面白い小さな山はいくつかあるけど、中心に「これがある」と言えるようなものがない状態だと思います。でも、大きい山を背負う覚悟と責任があれば、その山は作れる。自分たちも、まだその小さい山のひとつだと思うんですけど、それをもっと大きい山にしていきたいですね」
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