Kei Haradaが、クラブカルチャーを起点に、コロナ以降の都市文化を形作るアーティストやクリエイターたちをアーカイブする、本誌にて連載中の「Urban Archive」。第三回ではDJで、パーティ〈電気菩薩〉を主宰するTEI TEIをフィーチャー。ディープなDJスタイルと、圧倒的なカオス性でコロナ以降のパーティシーンを更新する彼女に迫る。
2026年8月20日
DJのTEI TEIは、コロナ以降のクラブ・パーティシーンを象徴するパーティ〈電気菩薩〉を主催する。中国出身の彼女は、文化服装学院への進学を機に中国から日本へ渡った。だが、来日後の彼女を襲ったのは、COVID-19のパンデミックによる行動制限と自粛要請で、多くの若者にとっての遊び場が強制的に奪われる未曾有の事態だった。日本中のクラブやライブ・ハウスが閉鎖に追い込まれる中、TEI TEIが強い影響を受けたのが、自粛ムードから離れて、日本各地で秘密裏に開催されていた野外のパーティだった。
「若い人たちは、自粛の雰囲気の中で押さえつけられるエネルギーをどこかで発散しようとしていて、野外のパーティはそのエネルギーが向かう先の一つだった。だから、あの時のパーティで生まれる熱はすごかったです。衝撃的でした」
野外パーティで受けた衝撃を出発点に彼女が手掛けるパーティが〈電気菩薩〉だ。彼らのパーティの最大の特徴は、従来のクラブ・イベントやパーティの常識を軽々と飛び越える圧倒的なカオスさだ。パーティには、DJの他にも、ダンサーや、LEDパフォーマー、ライブペインター、タトゥーの彫り師といった面々からSM嬢までが参加する。さらに、会場には麻雀卓やマッサージ台が設置され、さらに、DJブースの裏には、巨大な蛇の人形が顔を出し、無機質なクラブの空間をカオスな異世界に作り変えている。その異質さは、彼女が野外パーティで経験した都市や自然環境、人間の内面に存在するカオス性や予測不可能性をクラブという空間に解き放とうとする彼女ならではのアプローチによって生み出されている。
〈電気菩薩〉は、中華系カオスパーティという世界観の下、毎回ユニークなテーマが設定されている。初回の「中華系のメイド」というテーマでは、チャイナドレスを着た演者がフロアを盛り上げた。「プールパーティ」というテーマで開催された西麻布・Trafficでのパーティではフロアにビニールプールが持ち込まれた。最終的に会場の許可が降りなかったため、プールに水を張ることはできなかったそうだが、プールに入ることを想定していた水着のギャルたちがフロアに集結するアンダーグラウンドのクラブでは見られない稀有な景色が広がっていたという。
伝統や様式に関して、厳格な面も存在するアンダーグラウンドなクラブシーンにおいて、 〈電気菩薩〉は常識に捉われない想像力と美学で、シーンを更新している。そして、彼らの妥協のない姿勢と圧倒的なパーティのあり方が、普段はあまりクラブに行かないようなオーディエンスを惹きつけており、フロアには独特のスタイルやファッションを身につける人々が集まっている。
だが、〈電気菩薩〉の破茶滅茶なパーティのあり方とは裏腹に、DJとしてのTEI TEIは、ディープテクノやサイケデリックを横断するような深く潜っていくスタイルが特徴で、テクノシーンの深淵にいるDJたちからもその実力を評価されていることも興味深い。彼女自身も「私は、自分と向き合って、深く考えられるような音楽が好きなんです。表層的な盛り上がりだけを求めるような音楽はむしろ好きじゃなくて…」と語る。
そして、彼女がパーティを通じてカオスを持ち込んでいる空間は、クラブだけに留まらない。2022年の2月には、彼女が当時アルバイトをしていた中華レストランの〈香港園〉でもパーティを開催。2階をダンスフロアに改造し、DJブースと彫り師によるタトゥースペースを設置。1階のレストランスペースでは、食事が提供され、来場者は〈香港園〉の中華を楽しんだという。
「本当に思いつきでやったんだけど、めちゃくちゃ最高でした。コロナ下であまりお客さんの数が少なっていた時期だったので、お店の人にも『人がたくさん来てくれて嬉しかった』と言われたのを覚えています」
その後、〈電気菩薩〉は、2024年に川崎のちどり公園で伝説の24時間のレイブ・パーティを開催。多くの若者が殺到し、爆発的なエネルギーが生まれたパーティは、メディアからも注目を集める存在に。サブステージは、空間演出に特化したクルー「Topia」が手掛けた。
「Topiaは私の推しのチーム。むっちゃくちゃカッコよくて最高です。Topiaのサブステージはメインステージよりも盛り上がってたんじゃないって思うくらい(笑)」
パーティに見られる圧倒的なダイナミズムやカオスさとは裏腹に、人を惹きつける謙虚なパーソナリティも併せ持つTEI TEI。今年もとある場所で、野外パーティの準備をしているという。日本のパーティシーンの常識を覆し続ける彼女の今後に目を離せない。
プロフィール
TEI TEI
テイテイ|中国・北京出身。『電気菩薩(Denki Bodhisattva)』主催。ファッションを専攻するために訪れた東京で、Hypnotic / Dark TECHNOを中心にしたDJを始める。自身のイベントを始動後は、各地クラブでの公演はもとより2024年に開催した『OPEN AIR』は、J-WAVEで特集されるなど、大きな話題に。『フジロックフェスティバル』からアンダーグラウンドなパーティまでDJとしても幅広く活動する他、北京、香港、マカオでの凱旋公演や、上海、台湾、ソウルでの主催公演などアジア進出も積極的に行っている。
Kei Harada
東京都出身。慶應義塾大学卒業後、黒鳥社へ入社し、書籍の編集などを手掛ける。4年間のヨーロッパ滞在を経て帰国後は、東京を中心に、場所やメディアを横断しながら都市文化に関わる様々なプロジェクトを手掛けている。
インフォメーション
電気菩薩
2026年8月29日(土)
OPEN / START 23:00
会場:
MIDNIGHT EAST (Spotify O-EAST / AZUMAYA)
東京都渋谷区道玄坂2-14-8
DOOR ¥3,500
ADV ¥2,500
EARLY BIRD / BEFORE 0:00 ¥2,500
DISCOUNT ¥2,000
LINE UP:
=O-EAST=
DENKI STAGE : 24:00~5:00
[Face2Face]
DANDAN VS ERIMIYA
TEI TEI VS Mars89
Kanon VS Egomania
Muscle Brother
Rick Shinmi VS Hinode
=AZUMAYA=
ginsengmuseum STAGE : 23:00~5:00
Eternalusa
Takuma Matsunaga
Iga
拳
Will Be Saiga
trouble3p
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