私のいえは、東京 山のうえ Vol.11
社本真里の隔週日記: 山の備え
2022.06.27(Mon)
photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki
前項にて買い物のことを書いていたら、山の上に暮らす意識が変わったことががあると思った。それは“備え”だ。乾物や玉ねぎなどの根菜類、ジャガイモ、米や小麦などの主食、塩、味噌などの調味料のストックがしっかりあるか気をつけるようになった。

毎年たくさんつくって、農産物直売所に卸しているそう。
引っ越して間もない頃、もしもの災害時には集落が孤立してしまうことも考えられるので、その備えとして、2〜3ヶ月は買い物に行かなくても暮らせるようにしておくんだよ、とヨシコさんに教わった。7年程前、大雪で2m以上の積雪があり3週間程集落から出られなくなったとき、救助にきた自衛隊の方から「何か困っていることはありますか?」と尋ねられて皆「困ってないのよ~」と答えたそうで。話を聞いたときは、らしくて笑ってしまった。


2〜3ヶ月の備えと聞くと大変なことに感じるが、例えば今の季節だと、7月に収穫したジャガイモを納屋に保管して1年をかけて少しずつ食べていたり、味噌も冬に1年分仕込んだり、暮らし自体がが日々の備えになっているので、然程大ごとではないように思う。また燃料という意味では薪は欠かせない、怪我をした時はドクダミやユキノシタなどの植物を手当に使うこともある。山を中心とした集落の環境自体が、私たちの暮らしの備えになっている。
社本真里
しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。