ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.14

社本真里の隔週日記: 急坂とヘアピンカーブ

2022年8月11日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

檜原の山林
檜原の山林。40度程の斜度がある。

 林業会社に勤めていると、お客様を山へ案内することがある。すると皆さん山の急な勾配にとても驚く。東京は全国でも5本の指に入るくらい、斜度が急だ。

 私の住む集落へも、道幅が狭く急な坂道と、何度かのヘアピンカーブを登っていく。急なヘアピンカーブを車で走るときは、なるべく外回りをするように意識している。でないとタイヤが浮いてスリップしてしまうのと、タイヤへの負担を減らす意味もある。けれど毎日のことなのでタイヤの減りはとても早い。引っ越してきたばっかりの頃はマニュアル車だったので、急坂での坂道発進が出来るようになるまでとても時間がかかった。5年経った今はすっかり慣れてしまったが、当時は対向車が来ないことを祈りながら走っていた。

坂道。急なことが写真で全く伝わらなくて……とても悔しい。
旧道。昔歩いて上がっていた道が現在も残っている。今は鹿の群れの通り道になっている。

 その道ができたのは40年前で、それまで道はなかったそうだ。ヨシコさんは「昔は道がなかったから、子も荷物もなんでも担いで、歩いて上がったのよ。」とよく話をしてくれる。

 ジローさんとヨシコさんが集落に引越しした50年程前(道がなかった時)、ヨシコさんの希望でピアノを買った。でも業者さんが坂道をみて今回は諦めてほしいと頼んだそう。そのやりとりを見ていた下に住むおじいちゃんが、うちにもピアノがあるから上げられるよ、と言ってくれて、無事に家にピアノが届いたそうだ。

無事に届いたピアノ。50年後の今もジローさん、ヨシコさんの家に健在。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり |  1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。