TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】Kanoko

執筆:遠藤文香

2026年8月3日

そもそもかの子との出会ったきっかけは、造本家の町口覚さんから連絡をもらったことだった。

町口さんは2014年から小説と写真を1冊の本の中にまとめた「文学シリーズ」というものを、これまでに森山大道さんと太宰治、野村佐紀子さんと坂口安吾などの組み合わせでbookshop Mから刊行してきた。

メールのはそのシリーズの8年ぶり6作目となる新作を、私の写真と岡本かの子の短編小説『鮨』(1939) の組み合わせで一緒に作りませんか、という内容だった。私は驚いて、やらなければいけない、やった方がいい、と直感した。(来週詳しく書くつもりでいる。)

町口さんはかの子の本をいつか作ろうと長年温めていたらしいのだけど、私の写真をたまたま仕事で目にした瞬間、長年引き出しの中にしまっていたかの子が、ガタガタガタッと音を立てて突然暴れ出した、と言っていた。それで、私に声をかけてくれたのだという。

みんなこうやって、かの子に関する決定や行動を、まるで自分の意志ではないかのように感じてしまうのが、本当に不思議でならないのだ。
そしてもう一つ、私の中ではかの子の仕業に思えてならないことがある。

(つづく)

プロフィール

【#4】Kanoko

遠藤文香

えんどう・あやか|1994年生まれ。2018年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒業、2021年に同大学院修了。修了後は東京を拠点に写真家として活動し、現在はロンドン在住。主に動物や自然を対象とし、それらと人間とのあいだに古くから培われてきた感覚に関心を寄せながら制作を行っている。主な個展に「when I see you, you are luminous」(Tokyo International Gallery、東京、2023)、「Kanoko」(Poetic Scape、東京、2026)などがある。主な出版に「Pneuma」(roshinbooks)など。

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【#4】Kanoko

Kanoko

薄い膜が境界となって内と外をつなぐ — その境界が揺れ、ふたりの気配が立ち上がる

小説家・岡本かの子
写真家・遠藤文香

小説が写真の説明にならず、写真が小説の挿絵にも資料にもならない。
それでも、読むことと見ることを行き来するなかで、小説と写真が〈いま〉として立ち上がる。

本書は、日本の小説と写真を一冊の本の中で拮抗させてきたシリーズの第6作として、岡本かの子の小説『鮨』(1939年)に、遠藤文香の写真を加え、編集・造本した“書物”です。

小説『鮨』には、消えない気配があります。その気配は、岡本かの子の生へも通じているように感じられます。
歌人として出発し、晩年に小説へと向かった岡本かの子の強度、そして家族や時代の圧を引き受けた一人の作家の輪郭が、この小説の背後で静かに息づいています。

その気配を想起させたのが、新進気鋭の写真家・遠藤文香の写真でした。
遠藤文香の写真は、境界を固定しません。
自然と人為、触れることと介入すること、その境界を揺らしながら、気配を残していきます。

岡本かの子の言葉が持つ消えない気配と、遠藤文香の写真が残す気配の余韻が、ただ並走しながら響き合い、ときには読んだはずの小説が違って見え、見たはずの写真の印象も変わっていきます。

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言葉:岡本かの子
写真:遠藤文香
出版:町口覚
デザイン:清水紗良(MATCH and Company Co., Ltd.)

判型:縦210mm/横148mm
頁数:240頁
写真点数:98点
仕様:並製本、スリーブケース入り

発行:bookshop M Co., Ltd.

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