ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.18

社本真里の隔週日記: 猿

2022年10月12日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 金木犀の花びらで道がオレンジに染まっている。落ち葉もちらほら落ち始めて、秋だなーと実感するこの時期は、山栗が木から落ちて道路にたくさん転がる。イガをあけるとすでに中身が無いものが多い。大抵猿が先に食べている。

栗

 猿はとても賢くて活発なので、山の果樹や木ノ実が実る時には、猿が先か、人間が先かといった具合でいつも競争になる。色づくのを待ってあと1日、と思っているともう遅い。

 猿が里にこれだけ降りてくるようになってから6~7年が経つだろうか、畑に植えた作物もみんな食べられてしまうようになって、年々、猿たちも経験を増していろんな悪さをするようになった。村の至るところで被害があったので、猿が侵入できないように、ネットで畑の周りを囲うようになったり、電気柵(柵に触れると自動的に電気が流れるもの)という代物も現れた。集落に住むおじさんからは、「猿も生きているんだから仕方ないよ。」と言われて半分は納得するも、大切に育ててきた野菜が全部かじられてしまうのにはやっぱり腹が立つ。

 群れは大体20~30匹くらいで必ずその中に少し体の大きいボスがいる。ヨシコさんは猿を見かけた瞬間、中華鍋を片手に鉄製の大きなお玉を持って鍋を勢いよく叩く。そして図太い声で「出て行きなさいーー!」と叫ぶのが恒例の風景。

電柱の上に猿がいた。動物はすぐに逃げてしまうので、なかなか写真が撮れない。

 ただそんなことを言ってもお母さんのお腹にへばりついている小猿と目があった時には、可愛い~と思ってしまう。猿たちが里に降りてきたのは、実のなる木々が減り森に食べるものがなくなってしまったことや、人が山へ入らなくなってしまい、人と猿のそれぞれの境界みたいなものバランスが少しずつ崩れているなど様々な原因が重なっていると聞く。

 猿以外にも山には数え切れないほどの動物が生息している。動物たちと私たち人の暮らしは今後どんな変化があるのだろうか。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。