ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.20

社本真里の隔週日記: 秋の夜長

2022年11月11日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

ストーブの上ではお湯も沸かしたり、スープを煮込むこともある。

 朝晩はぐっと冷え込み、紅葉が見ごろだ。今年は綺麗な年だという声が周りから聞こえてきた。最近は毎朝、ストーブの上でサツマイモをコロコロしながら焼いて朝ごはんにしている。

 この時期くらいから日暮れが早く、夜の時間がとても長く感じて憂鬱だ。子供達は暗くなるまで目一杯遊ぶ夏の時期と違い、家の中で遊んでいるようだし、ジローさんも早くに畑を切り上げるので、夕方早くから人の気配がなくなるのが寂しい。

 「でも、秋の夜は忙しいのよ」とヨシコさんは言っている。柿や、柚子や、冬野菜の加工をしたり、アクリルの糸でタワシを作ったり、裁縫をしたり、暇な時間はないそうだ。

 夕食が終わるとナイフと大きなボウルがコタツの上に並び、せっせと柿の皮剥きを始める。庭に大きな柿の木があって、干し柿にする。剥いた柿は紐がつけられる。柿同士が接するとカビてしまうので、間隔を開けながら均等に屋根下へ干していく。

ジローさんはいつも5センチ程度間隔を開けながらうっとりするくらい綺麗に干していく。

 今年は雨が少ないから、柿を干すには最適だったけど、不作で10個程しか採れなかった。数年前は、柿は豊作だけど、雨が続いて干している途中でカビてしまうこともあった。なかなか思い通りにならないのがここの生活で、それが当たり前な皆の暮らしにいつも感動している。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。