ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.23

社本真里の隔週日記: 山のシュトレン

2022年12月22日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 小屋の周りの木々達は、葉を落としてすっきりした。昼間は小屋によく日が入るので、夜に家に帰るとほんのり暖かく感じる。山の上は標高が高いから寒いんでしょ、と言われるが、実は日が当たり地熱が残っているからか、まちに近い集落の方が寒かったりもする。

 山の上では最近、シュトレンが作られている。シュトレンは伝統的なドイツの果物やナッツが入ったケーキだ。ジローさん、ヨシコさん家族は昔ドイツに住んでいたことがあったので、毎年12月に入ると何度もシュトレンを焼く習慣がある。

シュトレン。クリスマスまでの間に少しずつスライスして食べていくのだけど、すぐに食べてなくなってしまう。

 ヨシコさん家族がつくるシュトレンには山のものが入る。中に入れるフルーツは柚子の皮を甘く煮たものや、秋に仕込んだ干し柿、酵母は柚子のワタを使って継ぎ足して使っているものだ。

柚子の皮を甘く煮たもの。このまま食べてもとても美味しい。
ヨシコさんのレシピは、この本を自ら訳したものらしい。

 今年も作ったのよと頂いたシュトレンは、いつもの味で、いつもの山の匂いがした。どうつくるんだっけ、と聞くと、手書きのレシピを探してきてくれて、同時にヨシコさんの随分前(きっと30年くらい前)に書いたシュトレンを焼いた日の日記が出てきた。そこには、〝貧乏性なのか、自然のめぐみを放っておけない〟と書かれていて、思わずふたりで笑ってしまった。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。