私のいえは、東京 山のうえ Vol.29
社本真里の隔週日記: 銭湯部
2023.03.25(Sat)
photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki
日中は随分暖かい日が続くようになって、あっという間にフキノトウも花が開いてしまった。小屋周りの梅やハクモクレン、ダンコウバイも満開になって、山も蕾のピンク色が遠くからでもうっすらと感じられて可愛らしい。

毎月とある都内の銭湯に会社の木工房から出るおが屑を送っている。先日は「春なので桜の木のおが屑が出ますか?」とリクエストいただいたのだが、加工のタイミングと合わなくて出すことができずに悔やまれた。おが屑は湯船に入れて、浸かりながら木の香りを楽んでもらう。また森に降った雨が川や地下水脈を通って、銭湯で使われている地下水につながっているということ、銭湯やわたし達の生活にとって、森が身近な存在であることを伝える貴重な機会になっている。
わたし自身、出かけた先で銭湯に入ることはたまにあったけれど、この取り組みをきっかけに銭湯が近い存在になったような気がした。そんな最中、昨年末に東京都厚生労働局から銭湯クーポンが発行されていた。そのクーポンを発見した会社のメンバーが仕事終わりに銭湯へ行くようになった。その車に便乗する人が一人二人と増えて「銭湯部」というものができた。

銭湯部は、毎日ではなく皆の仕事の予定とその日の疲労具合によって不定期に開催する。仕事終わりの17:30、集合場所を決めて車に乗り込み、八王子や昭島あたりへ1時間程車を走らせる。(村には銭湯はないので)お風呂から出る時間の調整だけしてそれぞれにお風呂の時間を楽しむ、というもので、時には夕食も食べて、また村へ帰ってくる。最近はなかなか皆で行くことは少なくなってしまったが、一人のメンバーが練馬区まで行動範囲を広げているらしい。
プロフィール
社本真里
しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。