ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.40

社本真里の隔週日記: 街のヨシコさん

2023年9月17日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

川に足を入れるとみるみるで汗が引いていく。

 9月に入って、仕事で檜原へ来て下さる方たちが村は涼しいと思ったのに、とがっかりしていた。私も昼間の暑さにはびっくりしている。暑い日は昼休み、河原に出て川に足をつけながらお昼ご飯を食べる。これがものすごく気持ちがいい。

 前に近所付き合いがなかなかむずかしい話を少し書いた。無理に関係性をつくるつもりはないが、やっぱりきっかけが無さすぎる。そんな中、最近ハッピーな出会いがあった。その日パソコンの入った重たいリュックに、片方には買い物袋、もう片方には集落の友人から突然もらったウクレレを持って帰宅した。1階の廊下へは押し扉がついていて、ガラス越しに綺麗な白髪の女性が立っていた。

 「こっちに来るの?」のジェスチャーを受けたので「はい!」と頷くと、両手が塞がっている私を見て、すぐにドアを開けてくれた。お礼を言うと、「ここに住んでるの? 奥の?」と聞かれので「そうなんです」と簡単に挨拶すると、突然に「わたしは、ばあばよ」と言われた。私は一瞬フリーズした。「ばあば⁉︎ どちらの⁇」と聞くと、同じ階の4人家族の住む部屋を指さした。お母さん(娘さん)が仕事で帰りが遅い時にご飯を作りにきているとのことだった。綺麗な白髪は三つ編みに結われていてとても似合っていた。

 「いつでも遊びに来て」とお茶目な笑みで「では〜」と言って帰っていった。一瞬のことでびっくりしたが、私はすぐに「ここにもヨシコさんがいた!」と思った。近所付き合いはほとんどないけれど、本当に困ったことがあったらこの家に助けを求めようと心に決めた。やっぱり今日も街にいると私は檜原のみんなのことが恋しいのだ。

文章とは全く関係ない。
車にずっと転がっていた使い捨てカメラを現像してみたら、5年前に行った沖縄旅行のものと、数枚だけ小屋の中から撮ったものだった。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。