カルチャー

目指せGEEK WATCH図鑑!!! Vol.53

写真・文/久山宗成 a.k.a. Donald

2026年7月31日

photo & text: Muneaki Kuyama a.k.a. Donald
edit: Yukako Kazuno

前回は、腕時計という枠を飛び越えた「GEEK CLOCK」の世界をご紹介しました。置時計や壁掛け時計は、腕に装着するという制約がありません。 だから大きくもできるし、重くもできる。回転しても、飛び出しても、音が鳴ってもいい。 時計というより、オブジェであり、玩具であり、ときには発明品そのものです。今回ご紹介するクロックたちも、時間を正確に知らせることだけが目的ではありません。

開く。
回る。
光る。
歌う。
驚かせる。

そのひとつひとつが、「時間を見る」という行為を、ほんの少し特別な体験へと変えてくれます。それでは早速、GEEK CLOCKの世界へ参りましょう。

【時間をもっとロマンチックに】
1980年代に登場した〈CITIZEN〉の名作「グラフィッククロックシリーズ」。デジタル表示とアニメーションを融合し、時刻を小さな物語へと変えました。右の「マンハッタン・ドリーム」ではキングコングが摩天楼に現れ、左の「トワイライト」は夜明けから夕暮れまで移ろう空を描く。時間を知らせるだけでなく、未来への夢とロマンを映し出した時計です。

【SとM、あなたはどちら?】
「ご飯がススム君」は、人気商品「ご飯がススムキムチ」のトレードマークとして親しまれているキャラクター。その大きな顔をくるりと回すだけで、やさしい目覚まし音と絶叫アラームを切り替えられるユニークな目覚まし時計です。穏やかに起こされるか、強烈に叩き起こされるかはあなた次第。食品キャラクターのユーモアを、そのままギミックへ落とし込んだ遊び心あふれる一台です。

【ピクセルアートが命を吹き込まれる】
「スペースインベーダー」の象徴的なエイリアンが立体化された目覚まし時計。ピクセルアートをそのまま現実世界へ持ち込み、レトロゲームの興奮で一日を始めさせてくれます。

【夢のチームによる傑作】
マタリ・クラッセのデザインを、フィリップ・スタルクが監修した〈LEXON〉製FMアラームラジオ。時計表示をさりげなく組み込み、機能とミニマルデザインを美しく融合させています。

【クラシックロボットチャーム】
1980年代に〈マルマン〉が手掛けたロボット型クロック。時計は胴体に収まり、可動する腕が愛らしい表情を生み出します。玩具と時計の魅力を兼ね備えた一台。アラームの声は優しすぎでむしろ子守唄の如し。

【未来からの物体】
見ることよりも、誰もが時間を知ることを優先した時計。音声と光で時刻を伝え、視覚や聴覚に障害のある人にも配慮したインクルーシブデザイン。まるで未来のデバイスのような存在感を放ちます。

【まるでパックマン】
赤いボタンを押すと口をパクパク動かしながら、日本語で時刻を読み上げる、その名も「paku paku clock 」。ゆるい遊び心あふれるトーキングクロックです。

【Macが、時を刻み始めた。】
1984年に登場した〈Apple〉「Macintosh」をモチーフにしたデジタルクロック。CRTモニターを模した液晶には時刻や日付、温度が表示され、起動時には往年のMacを思わせるスマイルアイコンが現れる。背面にはフロッピーディスクドライブや各種ポートまで再現され、コンピューター史に残る名機へのオマージュが細部に宿る。時計でありながら、小さなデスクトップコンピューターを飾る感覚を楽しめる一台です。

─と、駆け足でGEEKなクロックの世界をご紹介してきました。確かに効率だけを考えれば、スマートフォンがあれば十分です。 それでも人は、わざわざ面白い時計を作り続けてきました。それは時計が、時間を知るためだけの道具ではなく、人を笑顔にし、驚かせ、会話を生むためのメディアでもあるからです。

GEEK CLOCKは、その思想を最も自由に表現できるジャンルなのかもしれません。正直に言うと、この連載を書き始めるまでは、私自身ここまでクロックに夢中になるとは思っていませんでした。しかし調べれば調べるほど、「なぜこんなものを作った?」という時計ばかり現れます。そして気がつけば、次に探しているのは腕時計ではなく、また妙な置時計でした。

時計の世界は、腕時計だけではありません。その先には、まだまだ深く、そして少し危険な「GEEK CLOCKの沼」が広がっています。また面白い時計を見つけたら、この沼からレポートしたいと思います。

プロフィール

目指せGEEK WATCH図鑑!!! Vol.53

久山宗成 a.k.a. Donald

くやま・むねあき | 改造活動家、企画編集者、GEEK WATCH偏愛家。ワタリウム美術館のミュージアムショップ地下中二階にて、2014年より改造見世物小屋『+R.I.P. STORE』を営む。様々なマテリアルや手法を組み合わせてジュエリー、腕時計、プロダクト、舞台美術などを制作している。趣味的に始めてどハマりしたGEEK WATCHのコレクションは今や700本以上。現在『GEEK WATCH PEDIA』なる本を編集中。

Instagram
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