ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.39

社本真里の隔週日記: もう平気

2023年8月29日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 もう秋が来たなーと感じる。昼間は暑いけど風は少し冷たいし、夜はぐっと気温が下がる。日が暮れるのも早くなった。暦を見ると立秋とあるからうなづく。

 まだ夏は終わらないと言わんとばかりに虫も、鳥も、動物たちも活発に活動する気配を感じる。小屋で寝る時、子守唄とは言い難いいろんな声がいたるところから聞こえてくる。小屋では今年もいつもの場所にアリが行列をつくり、巨大なクモがやってきた。(去年クモの話を書いたことを思い出す)

今年小屋にやってきた大きなクモ。今年は翌日にはもう姿を見せなったから、少しさみしかった。

 クモはしばらく居るのかなと思いきや、やっぱり今年もすぐに姿を見せなくなってしまった。街のアパートにも小さなクモが出た。小屋とは違い、機密性があるからか一度入ったら出口を見つけづらいのか、長らく滞在している気がする。

 先日、ついにアパートでゴキブリを発見してしまった。仕事から帰った夕方、洗面所の電気をつけると天井に這いつくばるのを見て、思わず扉をそっと閉めた。鞄を置いてキッチンで手を洗って、もう一度扉を開けたらもう居なかったが、案外平気な自分が居ることに驚いた。虫が大の嫌いだった頃なら捕獲する何らかの作戦を考えるところだが、そうはならない。村で暮らして、虫嫌いは環境との不一致が引き起こすことだと(街で会うから苦手、山で会うから平気)だと思い込んでいたけれど、自分自身が苦手を克服している! ということが今日の発見だった。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。