カルチャー
世界各地の人々の暮らしに想いを馳せる3作。
7月はこんな映画を観ようかな。
2026年7月1日
text: Keisuke Kagiwada
『春樹』
チャン・リュル(監)
主人公の春樹は四川省成都出身の女優だ。しかし、長いこと標準中国語で生きてきたため、成都語は喋れない。決まりかけていた映画への出演も、それが判明してたち消えになってしまった。人生に行き詰まりを感じる彼女は、数十年ぶりに成都に帰還し、かつての演技の先生、「国民的な女優になるなら標準語で喋るべし」という考え方の持ち主であり、つまりは春樹の成都語を奪った張本人と再会する。言語によって故郷を喪失した春樹が、先生やその息子らと時間を過ごす中で、言語とはまた別の仕方でそれを取り戻していく姿には、静謐な感動を禁じ得ない。7月3日よりシネスイッチ銀座にて公開。同じくチャン・リュル監督の『ルオムの黄昏』も同時公開。
『よき谷の物語』
ホセ・ルイス・ゲリン(監)
スペインのバルセロナ郊外にあるバルボナ地区。都会のほど近くにありながら、風光明媚なその“よき谷”で、実際に暮らす人々を捉えたドキュメンタリーだ。一見すると牧歌的な佇まいの彼ら彼女らだが、その口から語られる話は、移民、世代、人種、ジェントリフィケーションをめぐる、様々な対立も浮き彫りにするだろう。その意味で、社会の縮図のような場所ではあるが、単に問題提起的な社会派ドキュメンタリーと思ったら大間違い。「ここで映画を撮るなら西部劇がいい」とつぶやき、映画にまつわる本質的なアイデアすら提案する老人、そして彼のために用意されたまさに西部劇的なシーンは、本作があくまでシネマであることを高らかに証明している。7月3日より全国順次公開。
『また会えるよね』
ギヨーム・ブラック(監)
南フランスの寄宿学校を舞台に、卒業を間近に控えた高校生たちの日常を追ったドキュメンタリーだ。親との関係や将来の進路に悩む一方、宿舎での馬鹿騒ぎ、川遊びやハイキング、そしてレイヴパーティで日々を楽しむティーンたちを、まるで物言わぬ父親のように優しく見つめる監督の眼差しが素晴らしい。かけがえのないそんな時間が描かれるほど、迫り来る別れの気配も切実に感じられてくるわけだが、いたずらに感傷的にしない姿勢にも好感を持った。映画は100分がちょうどいいと信じる者として、「映画は2時間の〇〇」的な大喜利を聞くたび、密かにうんざりしてきた。しかし、本作はたった64分。その中にここまで充実した時間を真空パックしてしまった本作には、ひたすら驚くしかない。7月18日より全国順次公開。
関連記事
カルチャー
映画の”着替え”について考える。Vol.3/小澤京子
『薔薇の葬列』(松本俊夫)
2026年6月19日
カルチャー
山本恵里伽は『わたしはロランス』にカルチャーショックを受けた。
今日はこんな映画を観ようかな。vol.26
2026年6月27日
カルチャー
『演出をさがして 映画の勉強会』の話。
濱口竜介×三宅唱×三浦哲哉が語る読みどころとは?
2025年12月22日
カルチャー
櫻井万里明は、『ハッシュ!』を観て作家としてのマンネリを脱した。
今日はこんな映画を観ようかな。vol.10
2026年2月25日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.18/『シナリオ』(監督:ジャン=リュック・ゴダール)
「ゴダールは死ぬ前に全ての借りを返したのか?」
2025年9月30日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.16/『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』(監督:レオス・カラックス)
「レオス・カラックス監督に覚悟はあるのか?」
2025年3月24日
カルチャー
MY STANDARD COMICS/ヨン・サンホ
2022年10月18日
カルチャー
おもしろい映画、知らない?/宇多丸
夫婦の倦怠期を描いた映画
2021年11月10日
カルチャー
おもしろい映画、知らない?/W.デーヴィッド・マークス
音楽が重要な役割を果たすコメディ映画
2021年11月20日
カルチャー
VHSでしか観られない映画ベスト10
2021年11月4日
カルチャー
サンドイッチと映画
映画を見る片手間に食べられるから相性がいいなんて思ってほしくない。 この2つにはもっと人間の深い部分に関わっているんだから。
2021年4月20日
カルチャー
エンドロールを眺めるだけの日々はこれで終わりにしよう。
2021年11月4日
カルチャー
“関西弁フィルム・ノワール”を目指して作りました。
映画『BAD LANDS バッド・ランズ』の原田眞人監督にインタビュー。
2023年10月2日
カルチャー
a History of Horror Films ’80s(1/2)/文・平倉圭
クローネンバーグのヌチョヌチョした肉体。
2021年8月8日
カルチャー
a History of Horror Films ’80s(2/2)/文・平倉圭
クローネンバーグのヌチョヌチョした肉体。
2021年8月8日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(1/2)/文・福田安佐子
そぞろ歩くゾンビの夜明け。
2021年8月17日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(2/2)/文・福田安佐子
そぞろ歩くゾンビの夜明け。
2021年8月17日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(1/2)/文・碓井みちこ
ヒッチコックの恐怖演出。
2021年8月18日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(2/2)/文・碓井みちこ
2021年8月18日
カルチャー
a History of Horror Films ’90s(1/2)/文・入江哲朗
自己模倣するホラー映画。
2021年8月17日
カルチャー
a History of Horror Films ’90s(2/2)/文・入江哲朗
自己模倣するホラー映画。
2021年8月17日
ピックアップ
PROMOTION
実はこれも別注品。
BEAUTY&YOUTH
2026年6月18日
PROMOTION
カナダグースがなんだか変わったみたいだ。
Canada Goose
2026年6月11日
PROMOTION
無地もボーダーも心地いい。〈無印良品〉のTシャツでこの夏も。
無印良品
2026年6月12日
PROMOTION
これまでの20年とこれからのこと。
BEAUTY&YOUTH
2026年6月18日
PROMOTION
車体のカスタムパーツをオリジナルで作るメーカー・ダムド。その道を極めんとしつつ、フェスも音楽レーベルもやってるの!?
DAMD
2026年6月9日
PROMOTION
襟のついた服を着るカジュアル。
BEAUTY&YOUTH
2026年6月18日
PROMOTION
日常に溶け込む、5・5グラムの北欧デザイン。
LINDBERG
2026年6月9日
PROMOTION
3EYEとボートに乗る日。
Timberland
2026年6月9日