TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】産地の中ぐらし

執筆:深治 遼也(閃)

2026年8月14日


text: Ryoya Fukaji
edit: Koji Teramoto

「工房の座敷童」

と、最近自分と関わる人に自己紹介をすることがある。

ここで初めて自分のことを知る人は、何だこいつ、と思うのだろう。
ちょっと痛いやつである。

ただ、まあ、実際その言葉に見合うような生活をしている。

自分は普段、福井県で工芸産地に関わる仕事をしている。
休みの日になると、紙漉きや漆塗り、陶芸など、県内の工房へふらっと出向き、作業部屋の隅っこで職人さんの手仕事を片目に佇んでいる。

ものづくりが好き。
原点はそんな単純なもの。

ただ、その興味関心をあちらこちらに振り撒いていたら、いつの間にか、いろんな工房を出入りさせてもらえるようになっていた。

やっぱり、好きなことは言葉に出し続けた方がいいらしい。
ちゃんとつながる。
この産地にいると、それをよく感じる。

もちろん、工房にいる間は、ただ黙っているわけではない。
多分、職人さんにとってもちょうどいい話し相手にはなれている。

いさせてもらえる分、自分も何か新しい発想につながることを伝えられたらと思って過ごしている。

おしゃべり好きな座敷童だ。

そんな生活をもう三、四年くらい続けている。

ちなみに、「座敷童」というのは人に言われて気に入った言葉であって、自分で名乗り始めたわけではない。
痛いやつではない。

現代において、職人というと、色褪せた作務衣を着て、眉間に深くしわを寄せた無口なおじいさんを思い浮かべる人が多いのだと思う。
実際、自分もそう思っていたことがある。

でも実際は、みなさん普通の人だ。

工房にはYouTubeが流れ(時代を感じる)、たまに競馬を気にしながら、黙々と紙を漉き、休憩になれば美味しそうにタバコをふかす。

特定の一人を思い浮かべながら書いてみたが、書いてみると、これはこれで偏見を生みそうだ。

まあ、職人さんにもいろんな人がいる。

彼らも、手を動かす傍ら、考え事をする。

もちろん、そのすべてが大層なことではない。

でも、一人で黙々と作っている方は、延々考えている。
職人さんって、人と話していない時間は、ある意味ずっと自分と向き合っている。

時に、その考えは他の視点によって犯されることなく、時間とともに堆積し、固結していく。

職人は頑固だ、と言われることがある。
あながち間違いでもない。
多分、環境的に思考が凝り固まりやすいのだと思う。

時折、その固結した思考を、座敷童でいる自分に、問いとして投げかけてくる。

たまに腐敗していることもある。その人らしさが凝縮している分、衝撃は凄まじい。それはそれで面白いのだけど。

でも、時にはこれこそ真理なのではないかと思うような原石が出てくることもある。
何かを極める人は、やはりどこか特殊な視点を持っているのだろうか。

その原石のような考えに対して、自分も即興で答え、職人さんと問答を重ねる。

自分も考えることが好きな人間だ。
ただ、本当にそれはどうかなって思うところを突いて、揺らして、よりそれらしい⽅向に繋いでいく、そんなことが好きだ。

この状態になっている職人さんは、もう頭の中で理屈は完成している。
だから、話しながら、どう磨けば光るのかを意識する。

この問答は、思考の原石を磨くような作業だ。

続けていると、本質が透けてくることもある。
どうでもいいような真理もあれば、ものづくりに関わる真理も。

その過程で、多分、自分も毎回少しずつ視点が磨かれている。
自分の中では生まれなかった考え方に出会っている気がする。

おしゃべりをしに行っているのか、考えを磨きに行っているのか、自分でもよく分からない。

でも、それくらいの存在が、工房の座敷童にはちょうどいいのだろう。
今日も、工房の隅っこにいる。


福井の好きな場所

秋葉山展望台

たまに遊びに行く工房の職人さんとの散歩コースの一つ。美しい景色を見に行くというより、ここから見える屋根の下で今日もものづくりが営まれているのだと、あらためて実感できる場所。

プロフィール

福井県越前市を拠点に活動する同世代クリエイター、大西弘晃 上田樹一 高田陸央 深治遼也の4人によるクリエイティブチーム。
それぞれの異なる専門性を交差させながら、地域ならではの素材や文化に現地で触れ、それぞれが手を動かすことを通して新たな価値や解釈の創出を目指す。

Official Website
https://sen-fukui.com/

Instagram
https://www.instagram.com/sen_fukui/


深治 遼也

ふかじ・りょうや|1999年福井県生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。2021年よりオープンファクトリーイベント「RENEW」の運営に携わる。現在は漆器メーカーで働きつつ、複数の産地を横断して工芸の工房・人たちに関わる。産地が続いていくために、猫の手になりたい。

Instagram
https://www.instagram.com/fu_kajifu/