カルチャー
MY STANDARD COMICS/ヨン・サンホ
2022年10月18日
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2024/04/2cfa4d862c52e426bb6c4f73a17386da-1-750x750.png)
僕にとっての、漫画のスタンダード。
coordination: Shinghae Song(TANO International)
text: Reiko Fujita
photo: Alamy / Aflo
2022年11月 907号初出
「映画のような画面構成や
アングルに、中学生の頃から
影響を受けてきたのかも」
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2022/10/0-4.jpeg)
韓国の日本漫画ファンの間でも、『AKIRA』はレジェンド的な作品です。僕は中学生の頃に読んだのですが、アニメーション版をはるかに上回る拡張された世界観、具体的な描写とストーリーテリングにハマって、大友克洋さんの画風にすっかり夢中になりました。まるで映画のようなサイズ感や動勢、空間感、それらをありありと感じさせてくれるアングルと画面構成。もっと他の作品も読みたいと探しているうちに『童夢』に出合い、日本の原書や短編集も集めるようになって、最近新しく出ている『大友克洋全集』も全部買っています。2013年に韓国で『AKIRA』の翻訳版が正式発売されたときは、出版社主催の対談に呼ばれて(『未生 ミセン』の)漫画家ユン・テホと魅力を語り合いました。
![漫画](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2022/10/IMG_0896-2.png)
My Standard 1
『AKIRA』 大友克洋
講談社 1982〜’90年 全6巻
第3次世界大戦から38年後の“ネオ東京”を描くSF漫画。「ポストアポカリプスの描写にすっかり魅了されました。映画『新 感染半島』で廃墟となった都市に外部世界の人々が入ってくるシーンは、本作でアメリカの特殊部隊がネオ東京に潜入する場面をイメージしました。それ以外にも僕の作品はほぼすべて、この漫画に少しずつ影響を受けているように思います」
僕は祥明大学の西洋学科に通っていたのですが、漫画アニメーション学科の友人が多くて、彼らに薦められたのが浦沢直樹さんの『20世紀少年』。そこから自然な流れで『MONSTER』を知りました。ごく個人的な物語でありながら、とても巨大な陰謀論が共存する一大叙事詩のような雰囲気が好きです。
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2022/10/IMG_0895.png)
My Standard 2
『MONSTER』 浦沢直樹
小学館 1994~2001年 単行本:全18巻、完全版:全9巻
ドイツを舞台に繰り広げられるサイコサスペンス。「何度も読み返してきましたが、今また1巻から読み返しても楽しめる作品。僕が脚本を書いたドラマ『謗法~運命を変える方法~』のラストで、ヒロインのソジンが消えて空っぽのベッドが残るシーンにも本作の影響が」
そして、岩明均さんの『寄生獣』も絶対に読まなきゃダメだと大学時代に推薦されて、一気読みした作品。ものすごく好きな漫画に出合ったときって、その世界が実在するかのように感じるようになりますよね? 『寄生獣』はキャラクターがとてもリアルなので、僕もその世界観にどっぷり浸りきって、漫画には描かれていない別の出来事が起こるんじゃないかというイマジネーションを膨らませていました。ドラマ化の機会をいただけたのは、『寄生獣』を愛するファンとしてとても嬉しいことですし、楽しく、創作者としてものすごい意欲を感じる、そんな仕事です。
原作『寄生獣』のパラサイトの対決場面はほとんど全部大好きです。アイデアに満ちていて、世界観の論理がかなりしっかりしている。ベストシーンを選ぶとしたら、エンディングで連続殺人鬼が新一と交わす会話が印象的でした。この作品が持つ存在論的な問いや、共存への葛藤などが凝縮された場面だったと思います。人間とは何なのか、共存とは何か、こうした壮大なテーマについて考えさせられるわけです。
ヒーローものの構成やホラー要素、エンターテインメント性の高さを持ちながらも、実はとても文学的。大衆芸術に携わる人にできる、最大限の可能性を見せてくれる作品だと思います。
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2022/10/IMG_0900.png)
My Standard 3
『寄生獣』 岩明 均
講談社 1988〜’95年 全10巻
謎の生物が空から飛来し、人間の脳に寄生。高校生・泉新一の体にも寄生生物が侵入するが、脳ではなく右手に宿ってしまう。「長期連載漫画にもかかわらず、(生命の)共存というテーマから外れない完璧なエンディングを迎えたことに驚きと大きな感動を覚えました」
プロフィール
ヨン・サンホ
1978年生まれ。映画監督、アニメ監督。2016年、映画『新 感染 ファイナル・エクスプレス』、前日譚のアニメ映画『ソウル・ステーション/パンデミック』が大ヒット。実写ドラマ化を手掛ける『寄生獣 -ザ・グレイ-』がNetflixにて配信予定。
インフォメーション
![MY STANDARD COMICS/ヨン・サンホ](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2022/10/0-11-e1665644511365-320x228.jpeg)
『新 感染半島 ファイナル・ステージ』 ヨン・サンホ(監)
2020年/韓国/116分
原作者ヨン・サンホが自ら脚本・監督を手掛けたゾンビアクション映画『新 感染 ファイナル・エクスプレス』の4年後を描いた続編。ゾンビウイルスのパンデミックから逃れて香港に渡った元軍人が半島へ戻り、荒廃した世界で生き延びてきた一家と出会う。
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