カルチャー

読書の秋に、人生と向き合うべく読みたい3冊。

9月はこんな本を読もうかな。

2026年9月1日

text: Keisuke Kagiwada

『はいつくばって』
ミランダ・ジュライ(著) 岸本佐知子(著)

 ミランダ・ジュライによる2冊目の長編小説だ。主人公はジュライ自身を彷彿とさせる45歳の女性アーティスト。とある小旅行をきっかけに、中年期特有の人生の悩みに振り回される彼女の姿が、夢みがちであるが故の滑稽さと、マジであるが故の率直さが混ざったジュライ節で綴られる。清々しいまでに惑い続ける彼女は、『論語』にある「四十にして惑わず」が、現代人にとって全くリアリティに欠けることを、まさにはいつくばりながら証明しているのかもしれない。映画やアートも作るジュライだが、彼女の真骨頂はやっぱり文章にあると再確認できる一冊だ。¥3,245/新潮社

『自転車日記』
デヴィッド・バーン(著) 東辻󠄀賢治郎(訳)

 この夏、単独公演やサマソニ出演で日本を大いに沸かせたデヴィッド・バーンは、自転車愛好家として知られる。映画『アメリカン・ユートピア』でも公演後の会場から自転車で去っていく姿が確認できるが、彼はツアーで世界の都市をめぐる際に、折りたたみ式自転車を持ち込むという。そんな彼が自転車から見える景色を通して考えた都市論であり、自己観察でもある本書は、これからを生きるシティボーイの教科書になってくれるに違いない。¥3,300/鹿島出版会

『パンク・ガーデニング宣言 エコロジカルで型破りな庭園論』
エリック・ルノワール(著) 北代美和子(訳)

 フランスの造園家エリック・ルノワールが提唱する「パンク・ガーデニング」は、人間本位で植物にとっては地獄でしかない「美しい庭」という考え方にまず反旗を翻す。そして、完璧な管理をあえて手放し、植物本来の自然な生き様を尊重した庭作りを通して、生物多様性の回復を目指す。足元から地球を見つめ直すその政治的な実践は、ガーデニングとは無縁の読者の世界観をも刷新するに違いない。実際、読み終えた後に目にする日本庭園は、これまでと全く別物として映るだろう。¥2,640/草思社