カルチャー
新しい1年の幕開けにピッタリな3作。
1月はこんな映画を観ようかな。
2026年1月1日
text: Keisuke Kagiwada
『おくびょう鳥が歌うほうへ』
ノラ・フィングシャイト(監)
©2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.
ロンドンの大学院で生物学を学んでいた29歳のロナは、心の病を抱える父と、それゆえに信心深くならざるをえなかった母が暮らすスコットランドに帰省。そんな彼女が、恋人や自分をも傷つけてしまうレベルに深刻化したアルコール依存症を、野鳥保護の仕事を通して克服していく姿が綴られる。ロナを演じたシアーシャ・ローナンは、自身もアルコール依存症だったことがあるらしく、それを踏まえた熱演は見どころのひとつだ。ロナは同じくローナンが演じた『レディ・バード』の少女のように、髪色を派手に染め変える。時系列を交錯させながら描く本作において、その変化は現在地を見極めるポイントとなるが、注意深く見てないと見失うこともしばしばだ。しかし、今どこにいるかわからなくなる感じは、アルコールを過剰に摂取した者たちが見る酩酊の風景なのかもしれない。1月9日より公開。
『グッドワン』
インディア・ドナルドソン(監)
何かと他人にマウントを取りたがるクリスと、友人であり陽気なボンクラだが妻に捨てられ息子ともうまく行ってないらしいマットが、3日がかりのキャンプに出かける。うだつのあがらない中年男たちのキャンプ話と聞けば、誰もがケリー・ライカートの傑作『オールド・ジョイ』を想起するに違いない。しかし、本作では2人の間に、クリスの娘、17歳のサムを据えている点が大きく異なる。生理中にもかかわらず、それを隠してオヤジたちの空気を読み続けるサムは、タイトルの通り”グッドワン(いい子)”。彼女がいい子であればあるほど、オヤジたちの愚かさが浮き彫りになり、それが物語を動かしていく。そんなサムを演じたリリー・コリアスの、常に憂いを帯びたビー玉のような瞳が忘れがたい。1月16日より公開。
『アバウトアス ・バット・ノット・アバウトアス』
ジュン・ロブレス・ラナ(監)
舞台はコロナ禍のフィリピン・マニラ。大学で文学を教えるエリックは、とあるレストランで教え子のランスと朝食を共にする。本作はテーブルに座る2人の語らいだけをひたすら捉えていく会話劇だ。会話を通してだんだんと明らかになるのは、エリックの恋人で小説家だったマルコスが最近悲劇的な死を遂げたこと、そしてそこにはランスも何かしらの関係していたこと。構成が構成だけに、序盤は舞台劇のような印象があるが、色々なことが明かされていくにつれ、これまで固定だったカメラが震えるように揺れていくのは、映画ならでは。これだけミニマルなスタイルで、しかもたったの90分で、フィリピンという国をめぐるさまざまな事柄に肉薄せんとする野心に拍手を。1月17日より公開。
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