カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.54

マレーマイマイ

2025年12月3日

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机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata 
special thanks: Souki Ienaga
2025年12月 944号初出

カタツムリの法則から外れた、異形のマイマイ。

インドネシア、カンゲアン諸島の固有の、マレーマイマイの一種(Amphidromus perversus butoti f. infraviridis)。下部が緑色になり、黒褐色のタスキ模様が入る。貝殻の標本を扱うお店やミネラルショーなどで手に入れることができる。

 通常、カタツムリの殻の巻き方向は遺伝的に決まっており、大多数の種では右巻きで、ごく一部が左巻きだが、いずれもそのどちらか一方に決まっているのが一般的だ。これはカタツムリの交尾に深く関わっており、殻の巻き方向が一致していないと生殖器の位置関係が合わず、交尾が困難になるため。そんな中、東南アジアに生息するマレーマイマイは、右巻きと左巻きの個体がほぼ同じ割合で共存する仲間がいる珍しいカタツムリだ。ほぼ唯一例外的に巻き方の異なるペアの交尾が頻繁に起こっており、右巻き同士、左巻き同士のペアの交尾よりも多い。子は母親の遺伝子型を引き継ぎ、それによって左右両形が保たれている。なぜマレーマイマイにこうしたことが起こるのかは、まだわからないことが多いが、精莢の形状が、巻きが異なる相手との組み合わせで受精が成功しやすい構造となっている、という報告がされている。捕食痕の頻度の調査も行われたが、よりニッチな巻き方のほうが捕食されにくい、という証拠はここでは見られなかったようだ。