カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.51

炉底ガラス

2025年9月3日

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机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata 
special thanks: Tetsuya Tanaka, SONAWARI LAB.
2025年9月 941号初出

まるで氷のような、ガラス工芸の副産物。

表面に複雑に重なる地層のような筋跡は、塊から割り出されたガラスならでは。人の手によって生み出されたガラス工芸作品も美しいが、こうした作業工程で出る副産物にも美しさは潜んでいる。

 この氷のようなガラスの塊は、工芸用の溶解炉の底に堆積したガラスだ。約1300℃で溶かされたガラスを溜める「猫つぼ」と呼ばれる溶解炉から取り出されている。この陶器で作られた猫つぼは高温などにより劣化するため定期的に交換されるが、その際、壺ごとハンマーで割り、底に溜まったガラスの塊を取り出す。すると急激な温度差で壺内のガラスの塊はひび割れ、まるで砕いた氷のような姿となるのだ。その後、再度溶かされて工芸用に使われる。今回撮影した炉底ガラスは再生ガラスのため、鉄分や微細な不純物が含まれており、全体に青みがかった色味となり、その塊はアクアマリンのような爽やかな印象だ。表面には長い時間で積み重なった地層のような筋が幾重にも見られ、ガラス工芸の現場で副産物として生まれた、意図して作られたものではない不思議な美しさを湛えている。