カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.37

ジンカイト

2024年7月3日

机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata
2024年7月 927号初出

人間の産業活動から偶然生まれた鉱物標本。

ファイアボールが飛び出しているようなフォルムのジンカイトの標本。天然のものが結晶となるのは稀だが、ポーランド産の人工結晶はこのようなダイナミックな姿の結晶となるものもある。高い屈折率と分散率を誇り、虹色の輝きを放つ。参考商品。(ハンズ名古屋店10F地球研究室☎052·566·0109)

 アメリカのニュージャージー州のフランクリン鉱山、スターリングヒル鉱山やナミビアのツメブ鉱山など、ごく限られた場所でしか産出例がない鉱物「ジンカイト」。主成分である亜鉛を意味する「ジンク」からその名がついている。このジンカイト、天然のものはほとんど流通していないが、その代わりにユニークなエピソードを持つ人工結晶が流通している。それが今回紹介するポーランド産のジンカイトだ。ポーランドでこのジンカイトが偶然生成されたのである。その原因は諸説あり、工場の煙突内で亜鉛の精錬や塗料製造の際に出た蒸気が偶然結晶化したという説や、亜鉛鉱山が火災に遭った際に生成された、という説もある。いずれにせよ、人間の産業活動の中で偶然生まれた副産物的な鉱物だ。天然の美しい結晶を探すのはかなり難しいが、ポーランド産のジンカイトも、そのストーリー込みで非常に魅力的。非常に高い分散率を誇り、まばゆい輝きを放つ美しい鉱物だ。